島民のほぼ全員が売春の恩恵を受け生活していた島がある。耳を疑うような話だが、存在するのだ。三重県志摩市の離島、渡鹿野島だ。

「客は全島民に監視されている」「内偵中の警察官が置屋のマスターになった」「実態を暴いた女性ライターが失踪した」。著者は現地に足を運ぶのはもちろん、島外に住む関係者からも話を聞き、島にまつわる都市伝説を検証する。虚像を剥ぎ、島がなぜ売春島になり繁栄したかを解き明かす過程はスリリングだ。

 最盛期にはパチンコ店やストリップ劇場、裏カジノ店まであり、大通りは人で溢れていたという。現在は浄化運動が進み、観光産業での活性化を目指すが、衰退の一途で、昔を懐かしむ声も。売春という江戸時代から続く島の「伝統産業」を捨て、どのように生き残るのか。島民の苦悩も描き出す。

週刊朝日  2017年11月24日号