母親が誰かに注目して系図をたどると歴史の見方が変わることを教えてくれる一冊だ。

 例えば平家は壇ノ浦で男系は途絶えたが、平家から嫁いだ娘たちの系図を見ると、今上天皇に辿り着く。蘇我氏も中大兄皇子に滅ぼされたとされているが、女系は平安時代に栄華を極めた藤原家につながる。日本では先史時代から母系社会の伝統が根強い。一夫多妻の平安時代も妻の実家の地位が子どもの出世を分けた。藤原道長も逆玉に乗り、外戚政策を敷いた。

 母系社会が弱まったのが江戸時代。徳川将軍で正妻の子はわずか3人で、他の生母は身分が低い。歴史好きの家康は、妻の実家が権力を持つ恐ろしさを学んでいた。

 21世紀の今、妻や妻の実家の言いなりになっている男性も多いのでは。だが、歴史をふり返れば決して悲観する事態ではないのかも。

週刊朝日  2017年11月17日号