拙著『世界のビジネスエリートが身につける教養「西洋美術史」』では、こうした美術に関する知識や、その背景にある欧米の歴史、文化、価値観などについて、約2500年分の美術史を振り返りながら、わかりやすく解説しました。これらを知ることで、これまで以上に美術が楽しめることはもちろん、当時の欧米の歴史や価値観、文化など、グローバルスタンダードの教養も知ることができます。少しでも興味を持っていただいた場合は、ご覧いただけますと幸いです。

●『世界のビジネスエリートが身につける教養「西洋美術史」』 著者からのメッセージ

 私は、いつも講演で「美術は見るものではなく読むもの」と伝えています。美術史を振り返っても、西洋美術は伝統的に知性と理性に訴えることを是としてきました。古代から信仰の対象でもあった西洋美術は、見るだけでなく「読む」という、ある一定のメッセージを伝えるための手段として発展してきたのです。つまり、それぞれの時代の政治、宗教、哲学、風習、価値観などが造形的に形になったものが美術品であり建築なのです。それらの背景を理解することは、当然、グローバル社会でのコミュニケーションに必須だと言えます。

 一方の日本では、美術史というジャンルの学問が世間で認知および浸透していないのが現状です。それにもかかわらず、日本は非常に展覧会に恵まれています。とくに東京では年中展覧会が開かれており、海外の美術館が所蔵する一級の作品も来日を果たします。

 しかし、それをただ鑑賞するだけで終わることが多く、それはまるでわからない外国語の映画を字幕なしに観ているのと同じだと言えるでしょう。欧米の美術館を訪れた方なら目撃したこともあるかもしれませんが、欧米では小さな子どもたちでさえ学芸員や引率する先生に教わりながら美術品を鑑賞します。自分勝手に鑑賞するだけでは、当然、学べる点が少ないからです。

 残念なことに日本ではこのような美術教育が施されていません。このような状況からも、日本と世界の差を実感してしまいます。美術(それすなわち美術史)に対して造詣がないことは、むしろ恥ずかしいことであるという認識が日本ではなさすぎるのです。

 拙著『世界のビジネスエリートが身につける教養「西洋美術史」』では、一人でも多くの方に、馴染みのない美術史を身につけてもらえるよう、西洋美術史約2500年分のうち必要最低限の知識を1冊に凝縮しました。ただの美術品の説明ではなく、背景にある歴史や事件、文化・価値観など、「教養」としての美術史が学べるように心して記したつもりです。

 世界のエリートたちが身につけている知識を得られることはもちろん、歴史的な背景を踏まえ、美術史という概念および知識を念頭に置くことで、美術鑑賞や社交の場においても、より世界が大きく開かれていくことでしょう。ぜひ、本書で「世界」への扉を開いてみてください。