全編を通じて、これほどこの二文字が頻出する本は珍しいだろう。「男根」。日本の神話からキリスト教まで歴史を遡り、男女に性生活のインタビューも重ねる。

「大きいことはいいことだ」の20世紀史観の象徴とも言える男根だが、『古事記』では「余れるところ」と呼ばれていたとか。確かに数も余っているし、皮もだぶつき気味だと古代の人々の慧眼を著者は絶賛する。

 大きさや太さも医学的に優位性は全くなく、指先程度の大きさで女性を満足させられるとも。調べれば調べるほど、男根の実在は揺らぐ。

 未来に目を向けても人工授精など男根の将来を憂う材料ばかりで男性ならば読みながら思わず股間を握りしめてしまうかも。誰もが気になりながらも、口に出来なかったテーマに正面から切り込んだ作家魂に敬服だ。

週刊朝日  2017年10月27日号