ひとりで暮らすとこんなに不便、生きているのに寂しくて切ない、ひとりで死ぬと周囲に迷惑をかける―メディアは常にネガティブな面ばかりに訴えます。
では、ひとりで死ぬのは恐ろしいことでしょうか?
私が先ほど書いたのは、医療、警察、行政という、ある特定の立場の人から見た、ひとり身で死んだ時の状況です。
そういう立場の人たちにとっては、確かに孤独死は面倒かもしれません。
「余計な仕事を増やしてほしくない」
「家族仲のことなんて知らない、とにかく一緒に住めばいいのに」
「特養(特別養護老人ホーム)か介護付き有料老人施設にでも入ればいいのに」
そう考える人たちも世の中には大勢います。
独身者や高齢者はひとりで死なれると面倒くさくて困る、だから誰かと一緒に住まわせるか施設に入れるかしたほうがいい、という考えがすけて見えます。
これを、私たちの立場で見てみましょう。
私たちはひとりで暮らすか、誰かと暮らすかを自由に選択できる権利を生まれながらに保持しています。この権利は誰にも奪われません。
したがって、「ひとり身は孤独、孤独な人はダメな人」という風評による同調圧力はいかがなものかと思います。
ひとり身で暮らした上で亡くなることも、また自然なことです。
人が人として生きるため、生まれた時点から死ぬまで持ち続ける権利、それが基本的人権です。皆さんにも私にも、この権利があります。ひとり身で自由に生活し、自由に死ぬ権利は、基本的人権の「自由権」に相当します。
実際に、個人の尊厳を守りながら個人が自立できるようにしていけばよいのではないでしょうか。従来から高齢者が住みやすい環境を整えることが言われてきましたが、人としてはふだんから社会とつながりを持つことが大切です。
●孤独死が他者に与える効果とは
孤独死が生み出す「効果」も、ついでながら書いておきます。
(1)雇用を生み出す
(2)優越感を生み出す
雇用というのは、先ほどの医療従事者、警察関係者、地元自治体という立場の人たちに、誰かがひとり身で亡くなったことで「仕事が生まれる」状況です。