分別のルールをわざわざ調べない人でも、Twitterで流れてきたら気楽に見てくれるかもしれない、とためになるゴミ知識を日本語と英語で発信している
分別のルールをわざわざ調べない人でも、Twitterで流れてきたら気楽に見てくれるかもしれない、とためになるゴミ知識を日本語と英語で発信している

■環境活動はまず「仲間」

「最初はゴミ清掃があるから芸人を続けられるしラッキーと思ってたけど、だんだん、同期がテレビで活躍している姿を見て、俺いつまでこんなことやんなきゃいけないのかなと思ったりして。やらされ感があるうちは苦痛でした。なんで分別してくれないんだろうって腹立ったり、いわれもない理不尽なクレームを受けたりもあるから」

 変化があったのは、ある時「日本一のゴミ清掃員になろう」と決めてからだ。問題に追われる側でなく、問題を追う側になったら、精神的にぐんと楽になり、楽しくなった。

「例えばクレームがこないように、通りがかる人全員に挨拶しました。あいつが収集にきてたってわかると、クレームしにくいな、ってなるじゃない?」

 ゴミ収集中の体験や気づきをツイッターで発信し始めたのが話題を呼び、今の活動のきっかけとなった。

「例えば、シュレッダーのゴミに、瓶とか缶とか平気で入れるような会社があるんですよ。なんちゅう会社だって思うけど、経験上そういう会社は6年以内に潰れます。上司が管理できていないのかもしれないし、このゴミを出したらどう思われるだろう?って想像する愛社精神がない。ほころびとか人間性って、ゴミに表れるんです」

 活動するうち、日本のゴミの最終処分場はあと20年でいっぱいになると知り衝撃を受けた滝沢さん。「日本のゴミを減らすこと」が目下の目標だ。日本のゴミを減らすには、地域のゴミを減らさないといけない。地域のゴミを減らすには、個人のゴミを減らす必要がある。

「環境活動はまず仲間を見つけることが必要。一人で森の火事を止めろって言ったってそれは無理な話だから」

■顔の見える関係を

 ごみクラブがその基盤になったらと考えている。人数を増やすよりも顔の見える関係を維持するのが理想的だ。なぜなら、顔の見えない関係が、現代の諸問題の根源にあると考えているから。食品ロスも、ゴミ問題も。ゴミを出したら終わり。誰がどこにどうやって運んで、どう処理されるのか。そのことに想像が及ばない世の中の流れになっている。

 太田プロでは、いつしかゴミの分別が徹底されるようになったが、滝沢さん自身が呼びかけたからではない。

「滝沢が回収にきて苦労するかもしれないから、って誰かが言い出したみたいで。顔が見える関係だからですよね。それまで誰が回収してるかもわからないから、特に悪気もないけど、回収する人のことなんて考えてなかったんだと思うんです」

 5月3日(ゴミの日)から5月30日(ゴミゼロの日)まで、ごみフェス月間として全国各地でイベントを予定している。“良心”や“ボランティア”だけでは何事もなかなか続かない。楽しめる仕掛けを作るのは芸人の腕の見せどころ。スポンサー集めにも奔走した。

 一人で参加できるSNS企画もある。ゴミとかかわりのない人は、一人もいないはずだ。(ライター・高橋有紀)

AERA 2023年5月1-8日合併号