芸人でありゴミ清掃員でもある滝沢秀一さんが、ゴミ収集中の体験や気づきをツイッターで発信し話題を呼んでいる。大切なのは「顔の見える関係を維持すること」と語る滝沢さんの活動に同行した。AERA 2023年5月1-8日合併号の記事を紹介する。
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日曜日の朝。軍手をはめ、ゴミ袋を持った集団が東京・高円寺を練り歩く。
ビルの陰、ゴミ集積所ではないところに、買い物袋に入ったゴミが3袋、置かれている。
「誰かが最初に捨てると、ゴミがゴミを呼ぶんだよ」
青いツナギを着て、みんなの先頭に立って回収していくのは、芸人でありゴミ清掃員でもあるマシンガンズの滝沢秀一さん(46)。
■ごみクラブを主宰
一緒に歩くのは彼が主宰する「滝沢ごみクラブ」のメンバーだ。同クラブは2021年12月に発足したオンラインコミュニティー。100人ほどの会員がいて、ゴミのことやエコ、SDGsなどについて学んだり、実践したりしている。この日はゴミ拾い活動の第1回。所属事務所・太田プロの後輩芸人たちもこのクラブのメンバーだ。
「コンビニの前はタバコのゴミが多いですね。(ゴミを)見つけるとうれしくなってきました」
「ゴミを拾うと、自分がいい奴だと思えてメンタルが安定する気がします。あ、お宝発見!」
気が付いたことを口にしながら、なんだか楽しそうに拾っている。1時間後、公園に集合して拾ったゴミの分別が始まった。
「じゃあ不燃はこの袋に、可燃はこっちにまとめようか」
空き箱やおにぎりの包装を見ながら、
「家で分別すれば資源になるけど、外で捨てたら全部可燃ゴミになってしまうんだよな」
滝沢さんはまとめ役をしながら、それとなく気づきを与えていく。
滝沢さんがゴミ清掃員の仕事を始めたのは、36歳の時だ。子どもができて、家族を養う必要に迫られた。バイト募集に片っ端から応募しても断られ、知り合いの伝手でたどり着いたのがこの仕事だった。
のちに出したエッセイ漫画『ゴミ清掃員の日常』はシリーズ累計10万部を超え、ゴミ関連の講演活動でも全国から引っ張りだこの現在だが、初めからこうだったわけではない。3年ほどはふてくされていたという。