税金泥棒というのは、税金から給料をもらっているのに、それに見合った仕事をしない者のこと。ところが富山市議たちは、比喩ではなく、文字どおりの税金泥棒だった。

『富山市議はなぜ14人も辞めたのか』は、2016年に起きた市議の辞職ドミノについてのノンフィクション。疑惑をあばいた地元テレビ局取材班による共同執筆である。

 きっかけは議員報酬引き上げだった。市議会はこのご時世に、月額60万円から70万円への大幅アップをお手盛りで決めた。市民から不信感がつのるなか、政務活動費への疑惑が持ち上がる。情報公開請求によって得た膨大な伝票(4300枚!)を記者たちが丹念にチェックするうちに、驚くべき事実が浮かび上がる。なんと、自民党のボス議員が、開いてもいない市政報告会の経費を手に入れていたのである。領収証を偽造して。

〝税金泥棒〟はボス議員だけではなかった。自民党会派内で手口が共有され、野党民進党の議員も手を染めていた。かくして、定数40人(現在は38人)のうち14人の議員が辞職に追い込まれるという異常事態になった。

 予算も人数も限られた地方局の記者たちが、地道に事実を追い、腐った議員たちを追い詰めていく姿が小気味よい。読みながら、アカデミー賞映画「スポットライト」を連想した。カトリック司祭による児童への性的虐待事件をあばいたボストン・グローブ紙を描いた作品だ。本書もぜひドラマ化してほしい。

 腐敗していたのが富山市議会だけとは思えない。全国どこでも似たようなことが行われているはずだ。チューリップテレビに続け。

週刊朝日  2017年7月7日号