幼少時からアメリカ映画に触れ、ハリウッドの映画人に取材を重ねてきた著者が、朝日新聞「GLOBE」で連載した記事を一冊にまとめた。
「ハリウッドを通して見えてくるものは、その時代を表すまさにアメリカ」と語る著者。例えば「ブルーに生まれついて」では黒人と白人間の断絶、「ホームレス」では格差社会の現状について指摘。「タンジェリン」では初めてトランスジェンダーの俳優が起用されたことで、逆説的にこれまでのハリウッドが「性」の問題に差別的であったと解説する。
第三部では世界にまで舞台が広げられ、イギリスの女性参政権運動やイタリアの難民問題などが語られる。昨年のアメリカ大統領選の前後に行った数々のインタビューからは、時代と真摯に対峙する映画人たちの息づかいが伝わってくるようだ。
※週刊朝日 2017年6月16日号