「電通過労自死事件」を契機に政府は残業時間に関する上限規制を設けようとしている。だが、著者はサービス残業などが横行し労働者を逆に苦しめることになるのではと投げかける。政府から企業まで「働き方改革」の大合唱だが、現状の「働き方改革」は「働かせ方改革」との指摘はもっともだ。残業がなくならない理由は極論すれば、日本の会社にとって残業が合理的であるからだという。海外のように「仕事に人がつく」のではなく、日本の会社では「人に仕事がつく」。個人の担当が曖昧なため際限なく仕事は増える。
問題の本質は仕事の絶対量にあり、それを可能にする日本の会社の制度にある。働き方を変えるには小手先でなく、慣れ親しんできた雇用システムそのものにメスを入れなければいけないことを本書は示唆している。
※週刊朝日 2017年6月2日号