サヴィオークはロボットに個性を与えるという賭けに出た。スプリントでリスキーなアイデアをすばやく試せたからこそ、自信をもって賭けができたのだ。

●1週間で「数か月×巨額のコスト」の価値のある仕事をする

 よいアイデアはなかなか見つからない。またどんなによいアイデアでも、実世界で成功するかどうかはわからない。このことはスタートアップの経営にも、クラスでの授業にも、大企業で働くことにもあてはまる。

 一口に「実行」といっても、簡単なことじゃない。どこに一番力を入れるべきか? そもそもどこから手をつければいいのか? このアイデアを具体化するとどうなるのか? それを考えるのに、有能な1人を任命するのがいいか、チーム全体でブレーンストーミングをしたほうがいいのか? 会議や議論を何度くり返せば確信がもてるのか? そしていったん決定したら、誰が責任をもって実行するのか?

 投資先のスタートアップがこういう重大な問題に答える手助けをするのが、GVのパートナーである僕らの使命だ。

 僕らは時間給のコンサルタントじゃない。投資家だ。スタートアップの成功が、僕らの成功になる。スタートアップがすばやく問題を解決し、自立するのを助けるのが目標だ。そのためにスプリントのプロセスを調整して、最小限の時間で最大限の結果を出せるようにした。

 このプロセスの何がいいかといえば、チームにすでにそろっている人材、知識、ツールを活用できる点だ。

 スプリントを行うスタートアップは、堂々めぐりの議論をすっ飛ばして、たった1週間で数か月分の仕事をやってのける。ベータ版の製品を公開するまでアイデアの検証を待つ代わりに、リアルなプロトタイプを使って明快なデータをすばやく手に入れる。

 スタートアップは、スプリントからとてつもない力を得ている。なにしろ巨額の投資を行う前に、未来へ時間を早送りして、完成した製品と顧客の反応をかいま見られるのだ。リスキーなアイデアがスプリントで成功すると、莫大な成果が得られる。

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