そう。出ている役者さんたち全員が、歌も芝居もダンスもうまい、演出もキレとスピード感と意外性にあふれる、などということは、もうどの作品でもまったく当たり前の基本の基で、その凄腕の役者さんたちをサポートするミュージシャン達の演奏のうまさ、楽曲編曲の琴線の触れさせ方の鳥肌感(例えば「in transit」はニューヨークの地下鉄を舞台にした群像劇で、掃除人役の、すさまじいテクニックの持ち主のボイパ(voice percussion)のおっさんのナビゲート(リズム出し)に乗せて、出演者全員が全曲アカペラで歌い進んでいく。その力業たるや! そして、キャロル・キングの楽曲誕生秘話が楽しい「Beautiful」は、キャロル本人が、たった今出来たての曲を、プロデューサーの前でデモでプレゼンするピアノ弾き語りから、ドゥワップの黒人4人組のヒットソングにメドレーさせていくところの見せ方、聴かせ方の巧さときたら!)
それに加え、劇場の音響&照明システム、舞台のセット、セットのシーンごとの動かし方、もうすべてが「これぞ人を酔わせる、喜ばせることだ。どうよ!」という確信に満ちている。お見事としか言いようがない。
もう一つ「SCHOOL of ROCK」は映画版をすでに見てしまった後なので、ミュージカル版の作曲担当の、巨匠アンドリュー・ロイド・ウェバー先生のお手並み拝見だったのだが、モーツァルトの「魔笛」や、パープルの《スモーク・オン・ザ・ウオーター》をさりげなくおしゃれに引用したり、もう余裕綽々の音楽作り。心憎いほどの構成のうまさに脱帽するしかない。
話題の「Kinky Boots」は斜陽の靴屋をゲイのダンサーが建て直す話。この作品の音楽担当のシンディ・ローパーの曲も、ロックありラテンありバラードあり、どれも最高!
さて。ここまで書いて、はたと気づいたことがあるのだけど、で、そこがとても肝心ところなんだけど、結局、どの作品も話(物語)は他愛ないの。どれもこれも人情小話系。松竹新喜劇、吉本に通ずるベタな笑いと涙。そんな庶民的なお話が、ものすごい完成度の高い歌と踊りと芝居と演出と舞台技術ですすんでいく。まあ、こりゃあ、はまる人はどっぷりはまる訳だわな。ははは。私もその一人になりました。
日本にもブロードウエイミュージカルは近年、どんどん入ってはきているけど、やはり毎日そんな完成された舞台が、30作品以上、あの決して広くはないタイムズスクエア界隈にひしめき合うエリアで上演されていることの凄さよ。まいりました。いくらほめちぎっても、ちぎり足りません。 [次回、「その2」へ続く。 5/15(月)更新予定]