開演前のオケピです ちょっと暗くて情報量の多い写真ですが、正面の方がコンダクターで音楽監督。キーボードも時折弾かれます (撮影/谷川賢作)
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ちょっとわかりにく写真なんだけど、舞台側から2階席バルコニーを撮った写真。中央のモニターに本番中はコンダクターが映っていて、舞台上の役者さんはモニター上のキューを見ながら歌う。レトロな劇場なんだけど、こういった設備は実に細やか (撮影/谷川賢作)

 前回は5年前、2012年の正月をニューヨークで迎えました。オヤジも億劫がらずに一緒に行ってくれて、あちらに在住の妹家族と合流し、久しぶりに“谷川家全員集合写真”(当時、総勢9人。今、新メンバーが増え11人)を撮ったのでした。
 あれから5年。娘は結婚し、孫も生まれ……どうしたって遠い目になるよなあ。はい。てなわけで、遠い目している場合じゃないので、はっちゃきで行ってきました、ニューヨーク、我が心の故郷!

 正味9日間の滞在で、ミュージカルを4本、ライブを4本、NBAのバスケを3試合、イーストハーレム散策、ホイットニー美術館ビエンナーレ、チェルシーのギャラリー彷徨、閉店相次ぎ状況が深刻なCDショップ巡り(LPレコードに特化した店も多し)、ヤンキースタジアム詣で(試合はやっていませんでしたが)、健康志向著しいニューヨーカーのファストフードサラダ店、見つけては飛び込みetc……。

 妹が借りてくれた、エレベーターなしの5階(!)にある短期滞在アパートを拠点に、ショーとライブと試合を見て、街を徘徊、歩きまわった毎日でした。とにかく「過充電」な日々をおくりました。まだボーッとしています。このボーッの中にある、言語化できないモヤモヤをほんとはそのままそっとしておいて、いつか創作と演奏ににじみでたらいいなあ、と思うのですが当コラムを書いているのでそうもいかず、ムギュっと絞ってしまうのがなんかもったいない気がします。

 で、人は判で押したように「ニューヨークどうだった?」と軽くたずねるので、こちらも一言で簡単に返してしまいましょう。

「見たミュージカル4本ともが大当たりだった」

 ミュージカルは今回のツアーの白眉でした。なにを見たかというと、見た順に「Kinky Boots」「in transit」「SCHOOL of ROCK」「Beautiful The Carole King Musical」(大文字と小文字はPLAYBILL(プログラム)に記載のとおり)。実はいずれもシブめの作品ばかりで、自分の選球眼の確かさを素直にうぬぼれます。あちらでは一番人気はやはり「Cats」やら「The Phantom of The Opera」「The Lion King」。

 自分は今までたいしたブロードウエイミュージカルのファンではなかったはずなのだが、今回はどっぷりはまってしまった。これを契機に“ニューヨークミュージカル三昧の一週間”を年に一度作ってもいいかな、と思ったくらい。

 ではいったい、どこにそんなにはまったのかというと、やはり“あちらの伝統芸能としてのミュージカルの舞台制作の厚み”ということかな。長い年月を経て確立されてきた様々な技術と方法論。それに基づいて、なおかつ少しでも新しい斬新なsomethingを加味していこうという心意気、冒険心。

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