刑務所の白石死刑囚から大森弁護士に送られた手紙(撮影/大谷百合絵)
刑務所の白石死刑囚から大森弁護士に送られた手紙(撮影/大谷百合絵)

死刑判決後の心境は「むしろ落ち着いた」

 死刑確定後は、親族などごく限られた人との面会しか許されない。白石死刑囚はなぜか面会希望者のリストに大森さんの名前を加え、受理された。

「遠くない未来にこの世を去る人から『会いたい』と言われたら、理屈抜きで会いに行かなきゃという気持ちになる」と、大森さん。判決後初めての面会で、白石死刑囚は自身の心境を「判決前と何も変わらないし、むしろ落ち着いたかな」と語っていたという。

 以降、大森さんは半年に一度のペースで面会に足を運ぶようになった。本を買うためのお金がほしいという求めに応じ、面会のたびに1万円を差し入れた。白石死刑囚は、小説、日本画の画集、ゲームの攻略本などさまざまなジャンルの本を読んでいるようだった。ある時は、米国の囚人が監獄内でもできるよう考案した自重トレーニング「プリズナートレーニング」の指南本を読みたいと話していた。

 そして、今年6月24日。刑の執行が迫っているとはつゆも知らず、二人はいつもどおり面会室で向き合った。刑務所の職員以外の人と話せるだけでなく、書籍代も手に入る機会ということで、白石死刑囚はうれしそうに「感謝します」と口にした。

 面会時間の20分は、他愛もない近況報告で過ぎていった。

「白石さんはラジオのニュースでコメの値段が5キロ5000円まで跳ね上がっていると聞いたらしく、『先生はコメを食えていますか?』と心配してくれました。あとは、筋トレの成果として腕まくりをして力こぶを見せてきました。鍛えたいというより、独房の中では他にやることがないのでしょう。ムキムキではないけど、健康そうな体でした。ただ、めまいやふらつきなど拘禁反応のような症状が出はじめたそうで、心身ともに安定していた白石さんにしては意外だなと思いました」

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