
Z世代の鬱屈と憂鬱を瑞々しく鮮烈に描いた映画監督・山中瑶子さんが、AERAの表紙を飾った。世界から喝采を浴びる俊才は写真家・蜷川実花さんにどんな印象を抱いたのか。AERA 2025年9月1日号より。
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「山中さん、入られます!」
スタッフのかけ声とともにカメラの前に立った山中瑶子は、はじめ少し硬い表情をしているようにみえた。撮影の合間にモニターを確認する姿には、映画監督としての冷静さも漂う。そして自身を見て一言「なんにも考えていないように見える……」。
そんな山中に蜷川実花が「こんなに?というほど意識して目に力を入れるとグッと変わるよ」とアドバイス。そして、表紙の表情が生まれた。
「意識するだけでこんなに顔が変わるのか!と、今日初めて気づきました。映画を作っていて人を演出しているのに、こんなことにいま気づくのってやばいですね」
と、笑わせる。撮影の感想を聞くと、
「蜷川さんの映画もずっと観てきたので、なんて言うんだろう、もっとガツガツしている方なのかなと思ったらすっごく柔らかくて。それが今日一番の驚きでした」
19歳で撮影したデビュー作「あみこ」で、史上最年少でベルリン国際映画祭に招待されたのが7年前。2作目の「ナミビアの砂漠」で第77回カンヌ国際映画祭に到達し、国際映画批評家連盟賞を女性監督として最年少で受賞した。
ほとばしる才能の持ち主は気持ちよいほどに率直で、とにかく話がおもしろい。
「率直に言うようになったのは最近です。20歳のころは言わなくていいことは言わないようにしよう、と思って黙っていて、いつも不機嫌で怖い人だと思われていたと思います」
カンヌの熱狂から1年。ここ数カ月は充実した自分の時間を過ごしている。
「東京国立近代美術館のヒルマ・アフ・クリント展がすごくよかったです。昔だったらもっと浅い解像度で観ていた気がするけど、作家がそこにいたるまでの変遷とか、作家の生理みたいなものが自分に入ってくるようになった。感覚のギアがあがった感じがします」
(フリーランス記者・中村千晶)
※AERA 2025年9月1日号
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