
8月12日配信の本コラム「『石破辞めるなコール』に便乗して『維新』が連立政権入りを画策か 石破首相を続投させる大義名分は“副首都構想”」では、「石破続投の可能性は、一般に言われるよりもかなり高そう」だと書いた。ただし、「自民大復活ということは起きず、自民、立憲の縮小と少数政党の勢力拡大で、本格的な多数政党の合従連衡による政治構造に変化していく可能性が高い」ということも併せて指摘した。
だが、石破おろしが止まる兆しは見えない。
世間では、まもなく訪れる9月初めが一つの節目だと言われる。石破茂首相自ら辞任を決断するタイミングが訪れるのではないかというのだ。
参院選の総括文書のとりまとめが当初予想より少し遅れて9月初旬になりそうだ。それを受けて、進退を判断するとしている森山裕幹事長が辞任することになれば、石破首相も辞任せざるを得なくなるという見方だ。
昨年の衆院選で大敗し、今年6月の都議会議員選でも大敗、さらに、先の参院選でも自己が設定した勝敗ラインを下回り、ついに衆参両院で与党過半数割れになったことの責任は極めて大きいというのは常識的な見方だ。石破おろしには一定の理屈がある。
だが、辞めろと騒いでいる議員の多くは裏金や旧統一教会問題で脛に傷を持つ者が多い。麻生太郎、菅義偉、岸田文雄ら元首相トリオや茂木敏充前幹事長も動き、その上、裏金や旧統一教会問題の象徴的な議員である萩生田光一元政調会長の秘書が有罪判決を受けたとか、復党さえしていないこれまた旧安倍派の裏金戦犯の代表と言われる世耕弘成元参院幹事長の名前まで出てくれば、石破おろしは「悪人復活の謀略」のようにさえ見えてくる。
「悪人」の動きが激しくなればなるほど、国民は呆れ果て、反発を強めるばかりだ。
世論調査で、「石破すぐ辞めろ」は完全に少数派となり、総裁選前倒しも勢いを失う可能性がある。
そこで、「悪人」たちが期待するのが、石破氏の「心」が折れて自主退陣するというシナリオだ。
党内で大多数が辞めろと言い、森山幹事長が辞任すれば、自分だけ続投というのは、確かに精神的には極めて厳しい。反石破派は、そこに望みを託す。これまで除け者扱いで干され続けた石破氏が鋼の心を持っているとしても、この精神的な圧力をはね除ける力が残っているのかが問われている。
私には、石破首相が、先週のTICAD(アフリカ開発会議)に出席し、李在明韓国大統領との会談をこなした後も、インドのモディ首相との会談、トランプ関税の着地、補正予算案の編成、秋の国連総会出席など、多忙な日程を忙しくこなしていく日程を組むことで自分を鼓舞し続けているように見える。日々、手を抜かず、誠心誠意取り組んでいる自分に埋没することで、過酷なストレスに囚われることを避けるのだ。クリスチャンの石破氏は、神が課した試練に立ち向かうことが自らの使命であると考えているのかもしれない。
したがって、石破氏の心が折れる展開はあまり現実的ではない。