試合前からトレーナーに「片目が明くよう左目をマッサージしてください」と軽口を叩くなど、リラックスした森は、9回を片平晋作の3ランのみの3失点完投で、待望のプロ初勝利。「最後までマウンドにいて、勝つ味はこんなにいいものか」と会心の笑顔を見せた。
1年目は5勝16敗7セーブと大きく負け越したものの、翌80年から先発、リリーフで3年連続二桁勝利、83年には34セーブで最優秀救援投手に輝くなど、その右腕で草創期の西武を支えた。
今季の金丸同様、開幕から4連敗を喫したのが、DeNAのドラ1左腕・今永昇太(現カブス)だ。
2016年3月29日の本拠地開幕戦、巨人戦でNPB史上初の巨人1回戦でプロ初先発初登板した今永は、3本塁打を被弾し、7回4失点で負け投手に。「プロでは甘く入ったら、オーバーフェンスになる」ことを痛感させられた。
2度目の登板となった4月5日の中日戦では、7回1失点の好投も、投手の若松駿太の犠飛による1失点のみ0対1で2敗目を喫するという珍記録を経験した。同14日の阪神戦では、同点の6回に4長短打を浴びて3敗目。同22日の巨人戦は7回1失点の好投も、降板後の9回に乙坂智の同点ソロで敗戦投手を免れるのがやっとだった。
そして、4月29日の阪神戦も、セ・リーグ記録まであと「2」の14三振を奪いながら、1対2で敗れ、ついに開幕4連敗。登板5試合中4試合でクオリティスタート(QS)を達成しながら、登板1試合あたりの得点援護率(RS)が0.50という貧打に、アレックス・ラミレス監督も「3勝、4勝していてもおかしくない内容の投球をしてくれているのに」とボヤくほどだった。
だが、5月6日の広島戦では、駒沢大の先輩・白崎浩之、戸柱恭孝が「(今永は)大事な後輩ですから」と揃ってタイムリーを放つなど、6回までに5点を援護。「調子は一番悪かった」という今永も、毎回走者を許す苦しい内容ながら、7回を6安打9奪三振の無失点に抑え、6戦目でプロ初勝利を挙げた。
試合後の今永は「こんなに勝つのが大変とは……。広島に勝ったというより、過去の自分に勝った」と1勝の重みをしみじみと嚙みしめていた。
その後は6月11日のオリックス戦まで5連勝を記録し、1年目は8勝9敗、防御率2.93。翌17年にはプロ初の二桁(11勝)を記録するなど、球界を代表するサウスポーへと飛躍していった。