10月の放送開始から多くの委員の票を集め続けた火曜ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」(TBSテレビ)が最終回を迎え、月間賞を受賞した。本作は「契約結婚」をテーマにしたラブコメ。主人公のみくりが最後まで理屈で考え続け、結婚という制度のなかで曖昧にされてきたことを見せようとする姿勢が評価された。脇役まで恋愛と絡めてハッピーエンドにせず、違う道もあることを見せてもよかったのではないかという指摘もあったが、登場人物たちのセリフの誠実さ、パロディに見られる遊び心に対し、原作者と脚本家にエールを送りたいという声が多く上がった。
もう1作、ドラマから月間賞を受賞した「地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子」(日本テレビ)も、放送開始以来話題に上がり続けた番組。世評では「こんなことをする校閲はいない」という声も聞かれたが、ドラマは戯画化されるもの。著者・編集者・校閲者の関係から本を作ることの面白さが伝わってくると評価された。「鬼平犯科帳 THE FINAL」(フジテレビ)、時代劇スペシャル「佐武と市捕物控」(BS日テレ)の時代劇2作については、今後の時代劇に期待したいという議論に。詳細はGALAC本誌掲載の岩根委員の私評に譲る。
ドキュメンタリーでは、ETV特集「今よみがえるアイヌの言霊」(NHK Eテレ)が月間賞に選ばれた。近年復刻されたアイヌの民謡を収めた100枚のレコード。文字を持たず、音に文化のすべてを込めたアイヌだからこそ、民謡を通してその世界観がまざまざと伝わってくる。その文化が失われたのは、明治32年に制定された「北海道旧土人保護法」による。沖縄で大阪府警機動隊員が移設工事反対派市民に「土人」という言葉を投げつけた記憶も新しいなか、北でも南でも同じことが起きていたのだと気づかせる。NHK札幌局の、地元の文化を知ってほしいという思いが込められた良作である。月間賞には届かなかったものの、同じく地方局制作の「Born Again~画家 正子・R・サマーズの人生~」(琉球放送)も評価された。
バラエティでは、アイドルのイメージを刷新し続けてきた「SMAP×SMAP」(関西テレビ、フジテレビ)の長年にわたる功績が話題を集めた。残念な形での終了が惜しまれつつ、月間賞に選ばれたのは12月19日の放送。「BISTRO SMAP」でラストにふさわしい采配を見せたタモリ、SMAP自身のことを歌っているのではないかと思わせる選曲で登場した椎名林檎というキャスティングが絶賛された。ほかに「めちゃ×2イケてるッ!」(フジテレビ)の企画「君の心は。」も高評価を受けた。(文/藤岡美玲)
※『GALAC(ぎゃらく) 3月号』より