『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』第3弾キービジュアル (C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』第3弾キービジュアル (C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
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【※ネタバレへの注意】以下の内容には、既刊のコミックスと劇場版のネタバレが含まれます。

【画像】猗窩座より強い?「無限城編」に登場する上弦の鬼はこちら

 「劇場版『鬼滅の刃』無限城編 第1章・猗窩座再来」の勢いが止まらない。海外公開が始まったが、8月8日深夜の台湾最速上映も話題となり、わずか3日間で8億円を超える売り上げを記録しているという。9月からはアメリカ、ヨーロッパ、インドなど、さらにさまざまな地域でも公開が予定されており、ますます人気が上昇すると予想される。 

 「無限城編 第1章」の見どころは、鬼舞辻無惨の精鋭「上弦の鬼」と鬼殺隊「柱」や炭治郎たちをめぐる総力戦である。童磨戦、獪岳戦、猗窩座戦と3つの大きな戦いが展開し、それぞれにテーマ性があるのだが、これらはひとつの共通点で結ばれている。

 新刊『鬼滅月想譚 ――『鬼滅の刃』無限城戦の宿命論』を著した四天王寺大学文学部の植朗子准教授が、「無限城編 第1章」に通底する「師弟愛」のモティーフについて解説する。

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■無限城編“3つの戦闘”における異なるテーマ

 無限城編は“3つの戦闘”を軸に展開します。1つ目は「猗窩座 vs 炭治郎・冨岡義勇」、2つ目は「童磨 vs 胡蝶しのぶ」、そして3つ目は「獪岳 vs 我妻善逸」です。鬼殺隊の隊士たちが「因縁の敵」と対峙する、印象的な第1章の幕開けです。これらの戦闘には、異なるテーマがそれぞれ掲げられていますので、まずそれを確認していきましょう。

 猗窩座戦には、炎柱・煉獄杏寿郎の“弔い合戦”の意味がこめられています。冒頭では猗窩座が「久しいなァ」と炭治郎に呼びかけ、それを聞いた炭治郎は怒りをこめて「猗窩座ァァアア!!」と叫びます。この場面だけで、「無限列車の戦い」での煉獄の死の重さ、それをめぐる炭治郎と猗窩座との因縁の深さが表現されています。

 そして、童磨戦は、胡蝶しのぶが「最愛の姉」を殺した鬼を滅殺しようとする“家族の仇討ち”のエピソードだといえるでしょう。童磨としのぶは初対面ですが、姉・カナエの羽織を握りしめ「私の姉を殺したのはお前だな?」と童磨に詰問するシーンが印象的でした。

 そして、獪岳と善逸の戦いは、「雷の呼吸」の“後継者争い”というテーマをもとに、ストーリーが展開していきます。普段は穏やかで“お調子者”の善逸が声を荒げることは珍しく、この決戦が避けられないものであることが伝わってきます。

 しかし、実はこれらは「表のテーマ」です。この3つの戦闘には、ほかに「共通要素」があるのです。

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