大阪府警本部
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 府警捜査4課の対応について、元検事の落合洋司弁護士は「大阪府警が被疑者に手を出して、という捜査は検察でも知られた話。ただ、そんなことでは裁判で有罪にできないから、やめたと聞いていた。まだやっていたというのは、さすがにあきれます」と話した。

 一方、捜査対象となっていた「ナチュラル」の手口は非常に巧妙で暴力団をまねたようだという。女性を勧誘する「プレーヤー」と呼ばれるスカウト部門と「本社」と呼ばれる運営部門に分かれている。グループを束ねるスマホアプリも開発。中にはスカウトした女性の詳細なデータなどが記載されていたという。

 「ナチュラル」の傘下組織に在籍したことがあり、警察の強制捜査を受けたという男性は、「通常のアプリに見えるが、タッチしてパスワードを入れると、チャットができるようになっており、そこで指示や報告がされている。現場のスカウトは出勤時間まで、細かく管理されていた。ほぼ全員が偽名を使っており、まったく素性がわからない。警察に『ナチュラル』の幹部のことを聞かれても、警察が言う名前とこちらが知っている名前とは違うし、顔を見たのも数回程度だったので、どうにもならなかった」と振り返り、こう続ける。

 「警察の捜査を受けることを前提にして、アプリには『朝、警察が来たらドアをドンドンと何度も叩き呼びかける』『無視してその間に関連資料を破る、トイレに流すなど隠すように』『逮捕後は〇〇弁護士に依頼すると刑事に言うように』などと細かく対策が書かれていた。私がいた組織は『ナチュラル』の下に属するところ。警察に話を聞かれた時に『ヤクザ以上に組織化されている』と聞かされました」

 府警捜査4課は、4人が逮捕された強制捜査で「ナチュラル」の全容解明の可能性がある資料もいったんは差し押さえることができたという。しかし「違法捜査なので、押収品もすべて返却するしかない……」(捜査関係者)

 独特の手法のおかげで、これまでの努力が水泡に帰すのだろうか。

(AERA編集部・今西憲之)

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