――コスパ・タイパの時代に3時間の上映時間が受け入れられているのもすごいです。
Bさん これも仕掛けというか、手法のうまさだと思いますが、長いお話なのにひとつひとつのエピソード自体はすごく短いんですよね。ショート動画をどんどんつないでいるような、若い感覚がうまく生かされているのかなとも感じました。
Aさん たしかに次から次へと指でこう、スワイプするような感覚ですよね。説明不足な部分もあるけれど、逆にだるい部分が本当に全くない。緊張感がずっと続いているみたいな。実際、最初に見たときは同世代か年配の観客が多い印象でしたが、SNSで盛り上がっているので、若い層が増えてきた気がします。
Bさん 私も、最初は年配の人が多いように感じましたが、回を経るごとに客層が広がっていて「これが社会現象というものか!」って思いました。
プロモーションなしグッズなし、の枯渇がファンを呼ぶ
Aさん 他の映画と違うなと思うのは、ちょっと言い方が難しいですが「プロモーションの安売り」をしなかった点にあるのかなとも思っているんです。公開前にテレビのバラエティー番組で宣伝をしたり、日本各地の劇場をまわって舞台あいさつをしたりとかもなく、ほとんどメディアに出ていなかった印象があります。作品に自信があって、大事にしているのかなということも感じました。
Bさん 逆に公開されてから、出演者のインタビューがSNSにアップされたり、鑑賞した歌舞伎役者の方が感想をあげたりして、これまでにない広がり方でしたよね。公開後に中村鴈治郎さんと吉沢亮さんが対談したNHKの「スイッチインタビュー」の影響力は大きかったと思います。この映画はだいたい2週間ぐらい経つとまた見たくなるんですよ。これは本当に中毒です。それにやっぱり映画館で見たいんです。グッズなどもないし……。
Aさん そう! 何もないので渇望して劇場に行くし原作本も買う、みたいな状況です。