――おすすめの「見どころ」はありますか?

Aさん 歌舞伎の裏側を映した映像は、歌舞伎ファンにとってもめちゃくちゃ貴重でうれしいんです。早変わりを裏側から見ることができたり、おはやしの高揚感を感じられたり。

Bさん やはり吉沢さんが初めて「曽根崎心中」のお初を演じたシーン、あの表情は何度見ても持っていかれます。顔立ちの話になってしまうんですが、素顔は吉沢亮さんのほうが可愛らしく、横浜流星さんのほうがスッとシャープですよね。でも化粧をするとそれが逆になる。喜久雄には人を寄せつけないような冷たさがあって、家柄と血筋に守られた俊介のほうが可愛らしい感じになるというか、そこも2人のパーソナリティーをよく表していると感じました。映画を見た方の感想でも俊介は(中村)七之助さんに似ている、というものが多いです。

Aさん 「娘道成寺」ですっぽんからせり上がってきて、お互いに見つめ合うシーンはやっぱりいいですね。道成寺の2人が向かい合っているというよりは、本当に素の2人が一瞬向かい合っているような錯覚に陥る。それにオープニングの永瀬正敏さんと宮澤エマさんが登場する場面は、あれだけで映画一本作ってもいいんじゃない、というくらい。

Bさん 田中泯さんを万菊役にキャスティングした方も「神かな?」って思いました。本当に「化け物」みたいな女の人ってこんなだろうな、とぞわぞわさせる感じがたまらないですね。

喜久雄の楽屋ののれんに、あの人の名が――

Bさん 原作ファンからは「徳次の出番が少ない」という声もあるんですよね。映画ではほとんど描かれていないけど、原作では喜久雄のために命を張るくらいの大きな役なので。でも人に教えてもらって見て気づいたのですが、最後で喜久雄の楽屋ののれんに徳ちゃんの名前が出てくるんです! 「ああ、徳ちゃんこんなところにおった……!」って感動しました。

Aさん 私は歌舞伎を好きになったことによって、歌舞伎以外の日本芸能にもどんどん趣味が広がっていったんです。それが「国宝」でより多くの人に広がっていくのはとてもうれしいですし、私自身も文楽の「曽根崎心中」が見たくなりました。この秋に文楽デビューしようと思っています!

Bさん 私も南座が近いので、これからもっと歌舞伎を見に行こうと思っています。まずは「シネマ歌舞伎」から入ってみます!

――お話はつきないですね。本日はありがとうございました!

(取材・構成  フリーランス記者 中村千晶)

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