
この夏、東京でスズメバチの駆除依頼や相談が増えている。クマよりも人身被害が多いスズメバチから、どう身を守ればいいのか。巣を見つけたときの鉄則から、「悪徳業者」の見分け方までを解説する。
【実際の写真】スズメバチの巣はこんなところにも…【慌てないで】
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スズメバチの駆除依頼が増加
「今年、スズメバチの巣の撤去件数は、前年と比べて2割ほど増加しています。女王バチは、1つの巣に1匹だけ。昨年生まれて、死なずに越冬した女王バチが多かったのではないでしょうか」
そう話すのは、東京都ペストコントロール協会の副会長で、スズメバチの駆除を手掛ける「ヨシダ消毒」(練馬区)の清水一郎代表取締役だ。毎年、東京を中心に5千個もの巣を取り除いている。
駆除件数が増えたということは、今年、スズメバチの巣が増えた、ということだろう。
実は、人を死に至らしめるという意味で、日本で最も凶悪な生き物はクマではなく、実はスズメバチだ。クマが大量出没した2023年度、死者は6人。23年、スズメバチの毒針に刺されて亡くなった人は21人もいた。
スズメバチは巣を守るために、侵入者を攻撃する習性があり、巣の半径3~5メートルに「防衛ライン」を敷く。近づく人間を見つけると、そばの空中でホバリングする。「その先に巣があるから、近づかないでね」という警告だ。
「それを知らずに巣に近づいてしまうと、スズメバチはその人間に『攻撃フェロモン』を吹きつけ、マーキングする。巣から飛び出したハチはこれを目印に人を襲うのです」

法外な料金を請求
スズメバチの被害者の大半は60歳以上の高齢者だという。庭仕事の際、常緑樹の葉に覆われた巣に気がつかずに近寄り、刺されるというケースが典型的だ。
身近にスズメバチの巣を見つけたら、プロに駆除を依頼して早く安心したいところだが、現代ならではの注意点がある。
「残念ながら、この業界には法外な料金を請求する悪徳業者が跋扈(ばっこ)しているんです」と、清水さんは打ち明ける。
清水さんは東京都ペストコントロール協会で害虫駆除業者の入会審査を担当してきた。入会を希望する会社を訪問して代表者を面接すると、水回りの修理やかぎの開錠など、いわゆる「レスキュー系」と呼ばれる業者が害虫駆除を手がけていることが少なくないという。
「害虫駆除業者を名乗っていますが、害虫駆除についてはシロウトです」
このような会社はスズメバチの駆除依頼だけ受けて、実際の駆除を「流しの業者」にやらせる。そこでいわゆる「ぼったくり」が行われてきた構造があるという。
