
「一生に一度でいいから…」71歳女性の願い
ハイクラスの宿泊者限定のバーラウンジで、女性は延々と自分の身の上話を語って聞かせた。
女性の夫はいわゆる“昭和の男”で、セックスは子作りと性欲解消の道具としか捉えていなかったという。そんな夫は、40歳のころに他界。以降、女性は子育てと仕事一筋で生きてきた。しかし、子どもたちが巣立って一人の時間ができた時、「一生に一度でいいから男に求められる喜びを味わってみたい」と思うように。ネット検索で女風にたどりつき、亡くなった当時の夫と同い年で容姿もそっくりな洋平さんを見つけた、という経緯だった。
ラウンジが閉まる夜9時半を過ぎ、ホテルの部屋に戻っても、洋平さんは女性が満足するまで話を聞き続けた。その後は、性感プレイの要望はなかったため、軽くスキンシップをしたり、添い寝をしたりして過ごした。
「その方は『昔の夫に会っているみたい』と、とても喜んでくださって。私の寝顔をずっと見ていたそうです。翌朝、別れ際に『今後私から連絡することはありませんが、あなたがセラピストを辞める時はご連絡ください』と言われ、その潔さに彼女なりの美学を感じました」
女風セラピストの“やりがい”とは何なのか。洋平さんに尋ねると、「『女性を幸せにしたい』といった美談的な動機はなく、本音はお金が一番」としつつも、セラピストの“役目”について、こんな答えが返ってきた。
「女性はいくつになっても、女として魅力的でいたいと願うし、異性の温もりを求めるものです。つい我慢しながら生きてしまう女性たちに対し、『本当のあなたは何がしたいの?』とその欲求をきちんと掘り下げ、二人三脚でケアをすることではないでしょうか」
(AERA編集部・大谷百合絵)