女風セラピストの洋平さん(写真は本人提供)
女風セラピストの洋平さん(写真は本人提供)

「風俗だけで心を満たしちゃだめ」

 洋平さんは、1時間6000円でデートに応じている。水族館に行きたいといった定番のものから、2時間ランチをしたい、手をつないで散歩をしたい、夫の愚痴を聞いてほしいといったものまで、女性たちの要望は千差万別のようだ。

「男性は肉体的な欲求が解消すれば満足する傾向がありますが、女性は精神的な充足を求める人が非常に多い。私のお客さんは大半が既婚者で、『夫から大事にされない』『自分に女性としての魅力がなくなったのかもしれない』などと孤独や不安を募らせ、女風に救いを求める方が数多くいます」

 そんな女性たちに対し、洋平さんは「十分キレイだよ」といった耳当たりのいい言葉はあえてかけず、じっと話に耳を傾ける。アドバイスを求められた時は、「なぜ夫婦関係が変わってしまったの?」などと問いかけ、互いにコミュニケーションが希薄になっていないか、夫婦の悩みの根源に向き合えるようサポートするという。

「僕はよくお客さんに、『風俗だけで心を満たしちゃだめだよ』と言います。心のメンテナンスとして時々利用するのはいいけど、依存すれば破滅しかない。プライベートでうまくいくよう、背中を押すようなセラピストでありたいと思っています」

 洋平さんが日ごろ痛感するのが、女性たちの深層心理にある「自己犠牲の精神」だ。

「『風俗に通うなんて母親失格ではないか』『家族ではなく自分のために何万円も使っていいのか』などと、罪悪感をこぼす方は少なくありません。男女平等が当たり前になったはずの世の中ですが、女性である以上家庭を優先するべきだという意識があり、自分の欲求との間で葛藤しているのだと思います」

 一人の女として生きたい。そんな真剣な思いを託してくれた、洋平さんにとって忘れられない利用者がいる。

 当時71歳だったその女性は、夕方6時から翌朝9時までの“宿泊コース”で洋平さんを指名した。東北から新幹線でやってきた女性は、「風俗なんて最初で最後だと思うから、特別な夜にしたい」と、新宿・京王プラザホテルの豪華な一室を押さえていた。

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