
劇場版「『鬼滅の刃』無限城編 第1章・猗窩座再来」が公開からわずか10日間で興収128億円を突破するなど、勢いが止まらない。同作は美しい無限城の描写も話題になっているが、あの空間を創造した鬼といえば、琵琶を手に持つ「上弦の肆(四)・鳴女」だ。
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『鬼滅の刃』などのマンガ作品を研究している四天王寺大学文学部の植朗子准教授は、新刊「鬼滅月想譚 ――『鬼滅の刃』無限城戦の宿命論」の中で、原作本編では明かされていない意外な過去から、鳴女の特性について言及している。同書から一部を抜粋・変更してお届けする。
【※ネタバレへの注意】以下の内容には、既刊のコミックスと劇場版のネタバレが含まれます。
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■謎多き鬼「鳴女」の異能と〝目玉〞
『鬼滅の刃』の背景作画で話題になったものの1つに、無限城の描写があります。アニメーション制作を担当しているufotableへの賞賛は以前から寄せられていましたが、あの果てしない空間の広がり、不気味な美しさには誰もが息をのみました。
さて、物語において、あの特殊な空間を作り出したのは、新たに「上弦の肆(=四)」に加わった鳴女 です。刀鍛冶の里で炭治郎たちに敗北した半天狗 の後に、彼女は〝上弦入り〞しています。恋柱・甘露寺蜜璃と、炭治郎、玄弥、禰豆子を最後まで翻弄したあの鬼の後釜になったわけですから、鳴女の実力もおのずと想像がつきます。
ただ、原作中では、鳴女が鬼殺隊と直接バトルする場面はありません。彼女は戦闘力そのものではなく、どちらかといえば「異能」の方を無惨に高く評価されたのだと思われます。鳴女は小型の化け物を無数に操り、鬼殺隊を見張り続けました。その化け物は、「肆」と刻まれている眼球を本体とし、そこから視神経のような足が生えています。闇夜の中で、ガサガサと動きまわるその様子は、まるで妖怪のような恐ろしさでした。
そして、鳴女の能力はこの小型化け物による探査能力だけではありません。彼女は〝無限の空間〞を生み出し、おぞましい悪夢のような〝夢幻の城〞を決戦の場として、無惨のために創造したのです。
■原作では語られなかった鳴女の過去
マンガ本編では鳴女の詳細については語られませんが、公式ファンブックである『「鬼滅の刃」鬼殺隊見聞録・弐』の「大正コソコソ噂話」で、彼女の過去が明らかになっています。人間時代の鳴女は琵琶の演奏で生計を立てていましたが、賭博好きの夫のために貧しい生活を強いられていました。ある日、怒りが爆発し、夫を金槌で撲殺してしまいます。その後、数多の殺人をへて、無惨によって鬼にされました。