そんなわけで、中学生から大学生まで続いたカレー責めの日々は、キャンプといえばカレーという常識(?)を打ち破り、なんとかしてカレー以外の料理を食べたい、という思いを私に植え付けた。

 ここに『ソロキャン!』が世に出た理由がある。つまり『ソロキャン!』は、過去の秋川の無念を原動力に、これから生まれるかもしれないキャンプ指導者たちをカレー責めから救わんとして生まれた物語なのだ。

 そりゃあ、ありとあらゆる料理に挑みまくるはずだし、賑やかに走り回る子どもたちや、それを叱る大人たちの声がしない世界で、「ひとり静か」に焚き火を愛でたいという主人公――千晶の気持ちもご理解いただけるのではないだろうか。

 そんな作者の過去の怨念(笑)から始まった『ソロキャン!』シリーズも、早四巻目となった。キャンプでもこんな料理が作れるのか、と周知することには成功しつつあるが、「ひとり静かに」を全うできているかというとかなり怪しい。

 千晶は、キャンプに出かけては、いろいろな人に出会い、悩みを訊き、なんとかそこから抜け出す道はないかと考え込む。時には、お節介が過ぎるのではないか、単なる自己満足じゃないか、と迷い、こんなのソロキャンじゃない、と嘆きつつも、千晶はキャンプ生活を楽しんでいる。

 千晶がカレーについてどう考えているかは謎だが、困っている人を放っておけない彼女は、カレーを罵る作者よりも遥かにできた人物に違いない。そんな千晶が、心静かに「ソロキャンプ」を楽しめる日は来るのか――乞うご期待である。

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