私がキャンプを始めたのは中学生のときだった。きっかけは、小学校五年生の時に受けたジュニアリーダー研修会だったけれど、本格的にキャンプ指導者(そんなに大げさなものではない)としてデビューしたのは中学一年生。大学生のお兄さんやお姉さんたちにまじって、子ども会の小学生にキャンプのノウハウを教えるという形だった。

 いまや風前の灯火ともいわれる子ども会も、私が大学生だったころは活動が盛んで、夏休みともなればあっちこっちのキャンプ場に出かけて幾十ものテントを張りまくり、大鍋に二杯も三杯もカレーを煮まくり、飯盒でご飯を炊きまくりだった。

 子ども会御一行様が現れたキャンプ場は見渡す限り子ども子ども子ども……少子化の「し」の字もなく、日本の未来はカレー色……いや黄金色に輝いていたのである。

 賑やかな子どもたち相手にキャンプを繰り返す夏は、とても楽しく充実していた。ただひとつ問題があるとしたら、当時のキャンプにおける食事の選択肢が、限りなく少なかったことだ。

 キャンプと言えばカレーと決まっていたあのころ、毎晩のようにカレー、どうかしたら翌朝もカレー……それでも残ったら「もったいない精神」のもと、子どもたちが帰ったあとも指導者たちが食べ続ける。はっきり言って「カレー責め」。これでカレーが嫌いにならないほど、日本の食生活はバリエーションが少なくない。町に出れば、ハンバーガーでもパスタでもラーメンでも食べられるというのに、来る日も来る日もカレーばかり、「もう見たくない」と思うのは当然だ(断言)。

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