
注目対局や将棋界の動向について紹介する「今週の一局 ニュースな将棋」。専門的な視点から解説します。AERA2025年8月4日号より。
【貴重写真】和服じゃない!スマホ片手にデニム姿の藤井聡太さん
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7月19日、藤井聡太七冠は23回目の誕生日を迎えた。将棋の現役棋士は現在、約170人。藤井はその中でもまだ6番目に若い。しかし藤井はすでに「大棋士」と呼ぶほかない実績を積み重ねている。
7月15・16日におこなわれた王位戦七番勝負第2局は、藤井にとって22歳最後の対局となった。挑戦者・永瀬拓矢九段(32)とハイレベルな攻防を繰り広げたあと、最後は藤井が「打ち歩詰め」の禁じ手で自玉の詰みをしのぐ劇的な結末。藤井はシリーズ2連勝で防衛に近づいている。もし王位を防衛すると6連覇。タイトル通算獲得数は31期で、渡辺明九段(41)に並び早くも史上4位の記録となる。
9月からは王座戦五番勝負が開幕する。挑戦者は伊藤匠叡王(22)。伊藤は現役棋士の中で5番目に若い。将棋界は年齢や肩書、その他一切の属性は関係なく、実力さえあれば、いずれは相応の地位に就ける世界だ。藤井と伊藤は、その象徴といえる。
藤井が過去に登場した31回のタイトル戦番勝負のうち、ただ一度だけ敗退したのが2024年の叡王戦五番勝負。藤井は伊藤に叡王位を明け渡し、八冠の一角が崩れた。以後、藤井は七冠を堅持し続けている。藤井と伊藤の久々の顔合わせとなる今シリーズは、将棋界の今後のゆくえをうらなう上でも大注目だ。
竜王戦は現在、決勝トーナメントが大詰めを迎えている。挑決三番勝負に進んだのは前期挑戦者・佐々木勇気八段(30)とダークホース・石田直裕六段(36)。両者のうちのいずれかが、10月に開幕する七番勝負で藤井に挑戦する。藤井は竜王位を防衛すると5連覇を達成。渡辺九段、羽生善治九段(54)に次いで、史上3人目となる「永世竜王」の資格を得る。
藤井が勝ち続けた先にはもちろん、八冠再独占の可能性も残されている。(ライター・松本博文)
※AERA 2025年8月4日号
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