ただ、漫才やコントを見て楽しむだけなら、そんな小難しいことを考える必要はない。生放送された「ダブルインパクト」の決勝では、予選を勝ち抜いた7組の芸人が漫才とコントを次々に披露していた。視聴者は純粋にそれらのネタを楽しめばいいだけだった。
かまいたちとジュニアの存在は大きい
そんな中で、出場者以外に番組を盛り上げていた功労者が、司会のかまいたちと5名の芸人審査員だった。とりわけ進行を務めた濱家隆一と、審査員の1人である千原ジュニアの存在は大きかった。
芸人たちの人生が懸かっている大舞台で、濱家はリラックスした空気を作り、落ち着いた態度で番組を進めていった。出場者がネタを演じている間に、大笑いしている濱家の姿が映し出されることも多かった。ネタが終わった後にも、ただ無難にまとめるだけでなく、審査に影響しない範囲でネタの中身についてさりげなく褒めるようなコメントをしていたのも印象的だった。
千原ジュニアが審査員を務めたのは画期的なことだった。なぜなら、彼はこれまで大きなお笑い賞レースで審査員の立場についたことがなかったからだ。お笑い界で確固たる地位を築いている彼が、どんな審査をするのかということにも注目が集まっていた。
蓋を開けてみると、実に見事な審査だった。出場する芸人の意図を汲み取った上で、明確な基準を持って審査を行っていた。審査コメントの言葉の端々にもその意識の高さが表れていた。
ジュニアは『千原ジュニアの座王』(関西テレビ)をはじめとして、多くのお笑い番組で芸人たちをまとめる立場にあり、揺るぎない信頼を築いている。千原ジュニアという芸人の「格」が、新しく始まったばかりのこの大会そのものの格を上げていた。そこに果たした役割は大きい。
最終的には「ニッポンの社長」が
ハイレベルな戦いの最後の最後で、優勝の行方はロングコートダディとニッポンの社長の2組に絞られた。ロングコートダディは、若手芸人界屈指の実力者であり、開催前から優勝候補の筆頭と言われていた。一方のニッポンの社長も彼らとは違ったタイプの「奇才」として業界内では注目されていた。どちらが優勝してもおかしくない接戦だったが、最終的にはニッポンの社長が競り勝った。
全国ネットの賞レースで初めてタイトルを獲得したことで、ニッポンの社長には箔が付いた。彼ら以外にも、決勝で活躍したセルライトスパ、スタミナパンなどは、ここで名前が知られたことで、これから仕事が増えそうな気もする。「ダブルインパクト」がのちにすばらしい大会だったと言われるかどうかは、ここに出た芸人がこれからどこまで活躍するかにかかっている。芸人の未来を作るイベントがまた1つ新たに始まったことを素直に喜びたい。(お笑い評論家・ラリー遠田)
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