第1話の場面から (c)テレビ朝日
第1話の場面から (c)テレビ朝日
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 阿部サダヲ×松たか子の夫婦役という時点でおもしろくならないはずがない。そして脚本を手がけるのは、大河ドラマ光る君へ」の大石静。そんな布陣で届けられる木曜ドラマ「しあわせな結婚」(木曜夜9時・テレビ朝日系)は、ただの結婚譚にとどまらない、マリッジ・サスペンスという新ジャンルを切り拓こうとしている。

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【写真】不穏な展開がクセになりそうな「しあわせな結婚」の場面

 ほんわかした夫婦のラブコメを想像していた視聴者は多いはずだ。だが、始まって30分も経たないうちに気づく。「これは、ただのラブコメじゃないぞ」と。

冒頭から違和感だらけ

 阿部サダヲ演じる人気弁護士・原田幸太郎は、テレビにも出演する有名人ながら「ひとり好き」を理由に50年独身主義を貫いてきた男。だがある日、テレビ番組の収録中に倒れ、入院先で強烈な孤独感に襲われる。

 そんなタイミングで偶然出会ったのが、松たか子演じる高校の美術教師・鈴木ネルラだった。退院の日には、まだ2度目の対面だというのに、彼女が迎えに現れて「うち来ませんか?」と誘ってくるという展開に、思わず笑ってしまった。いや、普通そんなことある? でも、その突拍子のなさこそが、このドラマにおけるトリックの始まりだったのかもしれない。

 ふたりは気づいたら結婚。幸太郎の「しあわせな結婚生活」が始まったかのように見えた。しかし、そう思わせておいて、物語は視聴者の裏をかくように方向転換する。

 ふたりの新婚生活は、はじめこそちょっとした可笑しみもあって微笑ましい。朝、ネルラが股関節を痛そうにして起きてくるシーンなどは、視聴者に「あらあら、昨夜は熱かったのね」と想像させる演出は絶妙。だがそれすら、どこか演技臭く見えてくるから不思議だ。

 ある日、幸太郎が予約していたレストランにネルラが現れず、連絡も取れないまま心配する場面がある。ついさっきまで笑っていたのに、突然「ネルラが何かに巻き込まれたのでは?」という不安が胸をよぎる。そしてその直感は、まったく間違ってはいなかった。

 車のなか、ネルラが見知らぬ男と真剣な表情で話している姿を幸太郎が目撃。しかもその男・黒川竜司(杉野遥亮)は後日、自ら幸太郎の前に姿を現し、衝撃の事実を突きつける——「ネルラには、15年前に婚約者を殺した容疑がかかっている」と。

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