チンギス・ハーン国際空港に到着しモンゴルの伝統的なお菓子「アーロール」で歓迎される両陛下。天皇陛下が食べ物を口に入れる場面を撮影させることは原則としてないため、貴重なショット=2025年7月6日午後3時3分、ウランバートル郊外
チンギス・ハーン国際空港に到着しモンゴルの伝統的なお菓子「アーロール」で歓迎される両陛下。天皇陛下が食べ物を口に入れる場面を撮影させることは原則としてないため、貴重なショット=2025年7月6日午後3時3分、ウランバートル郊外

 今回のモンゴル訪問に先立つ記者会見でも、陛下は、馬の乳で作られたモンゴルの馬乳酒について、

「モンゴルについては、馬乳酒はちょっと頂いたこともありますし、あとはそのほかにも強いお酒などもありましたが」

 と、触れている。だが、現地で馬乳酒を飲んだとも言い切っていない、微妙な言い回しだ。この会見で陛下は、07年の訪問時は、手術の直後だったためアルコールについて制限があった、と明かしているが、実はある事情があったようだ。

 当時、横綱・朝青龍の両親のゲルを訪れた際の映像などを見ると、陛下は白い飲み物の入った容器を口につけている。

 このとき、モンゴル大使としてゲルにも同行した市橋さんによれば、これは馬乳酒ではなく、ミルクを鍋に入れて沸かし少量の乾燥した茶葉を入れる、スーティ茶なのだという。

「モンゴルで馬乳酒は、ちょうど7月から出回ります。しかし、馬乳酒のできたての『新酒』は、1週間馬乳酒しか飲まないというほどのモンゴル人の酒豪でも、お腹の調子を崩すことがあります。07年の際は、周囲もそうしたことは気を付けていましたので、陛下がゲルでお飲みになっていたのは、スーティ茶です」

 そして雅子さまとの思い出を更新した今回は、おふたりは甘いお菓子を口にした。

 6日、チンギス・ハーン空港に到着した陛下と雅子さまがタラップを降りると、歓迎の印としてモンゴルの伝統的なお菓子が差し出された。ヨーグルトを乾燥させた「アーロール」だ。

 おふたりはためらうことなく口にすると、笑顔で「美味しかったです」と感想を述べた。その映像はニュースでも流れた。

 公式の場で、天皇陛下が飲み物以外の食べ物を口にする姿を撮影させることは、原則としてない。

「ひとりひとりとの交流や出会いを大切になさる陛下の誠実なお人柄がより伝わる訪問であったと思います」(市橋さん)

 雅子さまとそろってのモンゴル訪問では、また新しい「令和流」が誕生したようだ。

(AERA 編集部・永井貴子)

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