総務省
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 中居正広氏の性加害問題発覚後、フジテレビと親会社のフジ・メディア・ホールディングス(FMH)の対応をめぐる問題で、放送業界を所管する総務省は、全国のテレビ局に対し、経営の透明性や規律を高めるコーポレートガバナンス(企業統治)の強化を求める。具体的にはテレビ局向けのガバナンス・コード(統治指針)の策定を検討している。テレビ局の情報公開を進め、国民の信頼回復を図る考えだ。

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 総務省は、今回のフジテレビ側の問題について、テレビ界全体の信用を失墜させたと見ている。4月にはフジテレビFMHに対し、厳重注意の行政指導に踏み切った。同じタイミングで日本民間放送連盟(民放連)にも行政指導し、人権尊重、ガバナンスに関する施策の実効性を確保するよう取り組むことを求めた。

 ただ、この問題は根が深く、社長や会長を務めた日枝久氏が40年近くも経営の実権を握るなど、取締役会が実質的に機能していなかったことなどテレビ局のガバナンスの欠如が根本にあることも指摘されてきた。

 このため総務省はテレビ局全体に対し、ガバナンスの具体的な向上策が必要と判断。6月27日に大学教授や弁護士ら専門家8人でつくる「放送事業者におけるガバナンス確保に関する検討会」(座長=宍戸常寿・東京大学教授)の初会合を開いた。

 初会合で、総務省は議論の参考として上場企業に適用されるコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)などを紹介したところメンバーからは、テレビ局向けの統治指針の策定に賛同する声が出た。

 企業統治指針は、金融庁と東京証券取引所が2015年に策定。18、21年に2回改訂され、計83項目からなる。

 プライム市場において、独立社外取締役を取締役の3分の1以上にすること、株の持ち合いを減らすこと、女性の活躍促進を含む多様性の確保などを盛り込んでいる。

 83項目すべてを実行する必要はないが、順守しているかどうかは株主の評価にも影響するため、企業にとっては無視できないものとなっている。

 総務省の初会合で、放送と行政の関わりに詳しい名古屋大学の林秀弥教授はテレビ向けのガバナンス・コードの必要性を指摘。ただ、企業統治指針は資本効率や収益性の向上を強く求める側面があり、放送事業者に求められる姿勢とは必ずしも一致しない点があることをあげ、「テレビ局は災害報道など、短期的な利益や効率性を度外視しても放送活動をしなければいけないときがある」とコードをつくる際、報道機関としての性格も考慮するよう求めた。

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