ドライバーの不足や高齢化を懸念する業界団体の要請を受け、政府が閣議決定で「自動車運送業」を新しく特定技能の受け入れ分野に追加したのは昨年3月。正式に特定技能1号の対象として外国人ドライバーを受け入れる制度は昨年12月に整備された。
とはいえ現行制度では、接客や緊急時の対応を求められるバス・タクシー運転手に対しては、トラック運転手よりも高い日本語能力試験(JLPT)のレベルが求められていることなどがネックになり、特定技能認定は進んでいない。ただこれも、乗務中に「日本語サポーター」の同乗を義務付ける、といった条件つきで認める緩和案が提示されている。
そして、いよいよこれから外国人ドライバーが日常的に見られるようになるかもしれないという矢先、今回の参院選で降ってわいたように「外国人政策の厳格化」を公約に掲げる政党が相次いだ。中には、外国人労働者は受け入れるべきではないと唱え、国益を損なうおそれがるとする政党もある。この状況に小林さんは、「であれば」と、こんな疑問をぶつける。
「今よりもサービス水準を下げることが前提になりますが、それを日本の消費者は許容できるのですか、と問いたいです」
コンビニの商品棚には常に商品があふれ、宅配便の送料無料は当たり前。再配達で配送業者のコストが増加しても課金しないのも当たり前。日本の消費者が享受している世界的にもまれな物流サービスの水準はこの先、日本人だけでは到底維持できない。
より切実なのは、大規模な震災の発生時だと小林さんは指摘する。
「トラック業界の関係者から、『この先、外国人ドライバーの支えがないと最も困るのは、大規模な震災の発生時』だと聞いています。震災発生時に被災地に物資を運ぶには通常の何倍もの時間がかかりますが、厳しい労働時間制限のある今の法律のもとでは、一人のドライバーにそれを課すことはできません。引き継ぎ要員の確保が必須ですが、到底足りていないのが現状です」
バスにせよトラックにせよ、日本人ドライバーがこの先増えることは考えにくい。であれば、外国人材に頼ってドライバーを増やしていかないと日本人の生活は守れない、と小林さんは強調する。