
作詞家、ラジオパーソナリティー、コラムニストとして活躍するジェーン・スーさんによるAERA連載「ジェーン・スーの先日、お目に掛かりまして」をお届けします。
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「安物買いの銭失い」という言葉があります。安いからと購入すると、すぐ壊れたり質が悪かったりして、かえって高くつくという意味。江戸時代からある言葉のようですが、現代の日本では安くても良いものがたくさんあって、企業努力に敬意を払うとともに、どこかにしわ寄せがきているのではないかと、ちょっと心配にもなります。
体感的には10年くらい前でしょうか。百円ショップや家電量販店で売られている品々が、品質に対し価格が安すぎると感じることが増えました。生活者としてはありがたいけれど、ジリジリと景気が後退していく予感がありました。すでに景気は後退しまくっていたとはいえ、ネクストレベルに行く予感があった。物価が安くなって給与だけが増えるなんて都合のよいことはありませんから。
そんな時代を経て、今度は物価がジリジリ上がっています。戦争の影響で輸送コストや原材料費は上がるし、円安のあおりも食らう。人手不足やガソリン代の高騰による物流コストの上昇も。