
女性の目玉候補は「都合のいいターゲット」
なぜ、女性候補への危険な妨害行為が相次いでいるのか。テロ対策や危機管理に詳しい公共政策調査会研究センター長の板橋功氏は、狙われやすい候補者の特徴として「話題性」を挙げる。
「多くの加害者は、自分の行為が世間に注目されることを望んでいます。特に殺害予告は、本気で相手を傷つける気はない愉快犯がとる典型的な手口です。選挙戦の目玉候補でかつ女性が攻撃されたとなれば、マスコミで報道され、SNSでも拡散されるため、都合のいいターゲットとなっているのでしょう」
だが、加害者すべてが愉快犯とは限らない。3年前の参院選では、演説中の安倍晋三元首相が銃撃されて命を落とした。その翌年には、岸田文雄元首相の応援演説中に爆発物が投げ込まれた。事件を起こしたのは、いずれも単独でテロ行為をする「ローンオフェンダー(LO)」だった。警察庁は今回の参院選期間中、「LO脅威情報統合センター」を設置し、SNSのサイバーパトロールなどを実施。候補者に危害が及ぶような兆候がないか、目を光らせている。
実際に脅迫などの被害に遭った場合は、牛田氏のように遊説日程の公表を中止したり、警察に相談して警護体制を敷いてもらったりという対応は有効だろう。だが板橋氏は、特に警察を頼ることについて「選挙活動上の問題が大きい」とみる。
「演説会場に警察官が何人もいることで聴衆が寄り付かなくなったり、遊説場所が制限されたりと、自由な選挙が阻害されかねない。そもそも民主主義の根幹である選挙に、警察という権力機関が介入することは健全ではない。選挙事務所や政党が民間警備員を雇うなど“自主警備”を原則とするべきではないか」
安全第一の選挙戦を展開するのか、一票でも多く獲得するためにリスクを負うのか。候補者たちは難しい判断を迫られている。
(AERA編集部・大谷百合絵)
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