
しかし、今回、陛下は愛用のビオラとともにステージに上がり、日本で愛唱され続ける叙情歌「浜辺の歌」などを馬頭琴とあわせて演奏した。陛下は、この本番前にもビオラの練習を重ねていたという。
18年前と違うのは、そうした陛下の姿をご存じの雅子さまがモンゴルに同行し、温かなまなざしで陛下の演奏を見守っていたことだ。
07年、おひとりでモンゴルを訪問した陛下は笑顔と気遣いを絶やなかった。
カラコルムの草原でモンゴル馬に乗って散策を楽しみ、
「胸のすくような大自然ですね」「スカッとします」
そう、晴れ晴れとした笑顔を見せた。

日本の乗馬で一般的なサラブレットとモンゴル馬では、乗る感覚も鞍などの種類も違う。整備された馬場と違い、草原は石も凹凸もある。それでも、モンゴル馬や草原に囲まれていきいきとした陛下を見て、自然が本当にお好きなのだな、と感じたという。
また、カラコルムで遊牧民の文化を体験した際に、陛下が愛子さまについて口にして、話題を集めた。案内役だった元横綱・朝青龍の両親に、こう話したのだ。
「愛子は、相撲好きで朝青龍のファンで、ダグワドルジと本名で呼んでいます」
一方で、市橋さんが知る限り、雅子さまの話題を口にすることはなかった。
「陛下については、07年以前からお会いする機会もあり、誠実なお人柄と存じ上げております。陛下は、常に凜とした佇まいを崩さなかった。それでも、表情や言葉のはしばしから、雅子さまとそろってお出でになりたかったのだろう、というお気持ちは伝わりました」
18年ぶりとなった今回のご滞在では、おふたりそろってモンゴルの地に立ち、思い出を新たにされた。それが何より感慨深い、と市橋さんは口にする。
ところで、陛下がお好きなものと言えば、「お酒」だ。国内の訪問でも、日本酒などを好んで召し上がるエピソードは、よく耳にする。