響子さんは、実はプロレスラー時代から写真を撮られるのが苦手だという。「プロレスは好きだけど、人前に出て注目されるのは嫌でした。本当は田舎でひっそり暮らしたいタイプの人間で、取材もすごく苦手なんですけど、花の代わりに声を上げなきゃいけないから」(撮影/工藤隆太郎)
響子さんは、実はプロレスラー時代から写真を撮られるのが苦手だという。「プロレスは好きだけど、人前に出て注目されるのは嫌でした。本当は田舎でひっそり暮らしたいタイプの人間で、取材もすごく苦手なんですけど、花の代わりに声を上げなきゃいけないから」(撮影/工藤隆太郎)

 ほかにも、番組の未編集動画や企画書などの証拠について、裁判所から提示命令が出されているのに「職務上の秘密」を理由に拒否したり、放送倫理・番組向上機構(BPO)に対する答弁書では花の死の背景要因として母娘関係の悩みを挙げたりと、私たち遺族の心を折りに来ているような対応が続いてきました。

はらわたが煮えくり返った、フジ前社長の一言

――フジは今年3月、元タレントの中居正広氏の女性トラブルに端を発した一連の問題を受け、第三者委員会による調査報告書を公表しました。この報告書では、花さんが亡くなった事案が過去の「深刻な人権問題」と認定され、これまでのフジの対応が不十分であると指摘されています。

 報告書には、私が裁判を起こすまで、フジの取締役会でテラスハウス問題についての報告も議論もなかったと書かれていました。さらに港浩一前社長は、中居氏の女性トラブルが発覚した時のことを、「(被害女性の)自死の恐れが一番怖かった。テラスハウスの件のようになったら責任をとれないという思いがずっとあった」と話していたとあり、はらわたが煮えくり返る思いでした。花は命を奪われたのに、どうしてこんなにも他人事なんだろうと。

 報告書でも指摘されていましたが、テラスハウスの問題も中居氏の問題も、根底にはフジの人権意識の欠如があるわけです。花の事件があった時にフジがちゃんと非を認めて自浄作用が働いていれば、中居氏の一件は防げたはずだと思います。

 今、フジは人権尊重を掲げて新しく生まれ変わる姿勢をアピールしていますが、足元の裁判では相変わらず花の人権を無視した主張や、十分な証拠を出さない非協力的な態度を続けています。私からすれば二枚舌にしか見えないし、過去の問題は切り捨てて水に流すつもりなのでしょう。スポンサー離れのような外圧がかかればすぐに第三者委員会を立ち上げるのに、一個人が声をあげても無視する対応の差には失望しかありません。

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