当初、女性が育休を取った場合は10万円、男性が育休を取った場合は3万円に設定。同社の男性育休の平均取得日数(育休と連続して取得する休暇や休日を含む)は昨夏の時点で37日で、一般的な企業よりは多いものの、女性の平均が1年半であることから、給付金に差をつけることにしたのだという。すると社内外から「なぜ男性は少額なのか。モヤモヤする。それでは男性育休は短期間で良いという意識の固定化につながる」と見直しを求める声が多く寄せられた。そこで、産休・育休の合計が3カ月以上であれば、男女ともに同額を支給することにしたという。
「妊娠、出産は関心の高い話題でもあり、周囲の受け止めもさまざま。全員に一律にメリットがあることで制度の理解が進んだと思う」(丸山さん)
■当事者の負担を増やす
3月中旬には、小倉将信こども政策担当相が同社を訪問。中小企業の育児支援に有効だとして、制度について熱心に質問していたという。
労働政策に詳しい労働政策研究・研修機構の池田心豪(しんごう)・主任研究員は、すべての人へアドバイスを送る。
「長時間労働の背景には、男性が働いて家族を養い、女性が育児をするという性別役割があります。その役割を残したまま、男性には育児を、女性には仕事をすることも期待するような少子化対策は打てば打つほど当事者たちの負担を増やすことになります。性別役割という古い荷物を下ろすことが重要だと思います」
コロナ禍以降、各業界でリモートワークが定着し、以前に比べて家庭の事情に応じた働き方ができるようになってきた。この流れをうまく生かしつつ、人事評価を見直し、みんなに等しくメリットがある働き方改革が必要だ。(編集部・古田真梨子)
※AERA 2023年4月24日号より抜粋