AERA 2023年4月24日号より
AERA 2023年4月24日号より

 社内出生率の公表によって、出産を当たり前としている、と一部で誤解も招いたが、働き方改革の推進状況と成果が出たことは今後も世の中にシェアしていきたいという。

 男性のワーク・ライフ・バランスに詳しい芝浦工業大学の加藤恭子教授(組織行動論)は、

「男性の長時間労働が是正されるためには、人事評価と報酬が変わる必要がある」

 と指摘。日本企業の多くは「やる気」や「経験」などからなる「情意」が評価のポイントになっていて、その「情意」は、長時間会社にいることで評価されやすいものだという。大手企業はもちろん、中小企業では人手不足でもあり、仕事の成果よりも長時間仕事しているかどうかが重視されやすい傾向にあるという。伊藤忠商事が働き方改革で成果をあげているのは、その「情意」を全社員の意識から取り払うことができたからだろう。

■出産育児支える空気を

 もうひとつ、ポイントになりそうなのは「全員に等しくメリットがあること」だ。

 三井住友海上火災保険(東京都千代田区)は3月に「育休職場応援手当(祝い金)」を創設。社員が育児休業を取る際に、職場の人数規模等に応じて育児休業取得者本人を除く職場全員に、3千円~最大10万円の一時金を給付する内容だ。同一職場で複数人が育児休業を取得した場合も、複数人分の一時金が給付される。育休を取るのが男性であっても女性であっても、手当の額は同じだ。

 制度がスタートしたことを知らせるリリースには、こうある。

「出産・育児を職場全体で心から祝い、快く受け入れて支える企業風土を醸成するため、育休職場応援手当(祝い金)を創設します」

 制度の発案者である人事部の丸山剛弘さんは言う。

「管理職や周囲の社員は『おめでとう』と伝えているが、頭の中で、人員配置や業務分担を考え、心から快諾している空気が出せないことがある。育休を取得する社員の側も申し訳なさや罪悪感を感じていたので、なにか手を打ちたいと思った」

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