
単身世帯の数も生涯独身者も増えているはずなのに、制度設計の枠から漏れがちで肩身が狭い――。物価の高い都心を離れたいと思っても、地方はさらに生きづらさが付きまとうという。(全6回のうち3回目)。
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地元に帰りたいけれど…
「30歳を超えて独身でいることの肩身の狭さを、地元に帰ると強く感じます。独身のままでは、地元に戻りづらい」
こう吐露するのは、九州地方出身で、現在は東京で働く会社員の女性(34)。
仕事中心の多忙な日々を送っているが、「いつかは地元に戻って、時間的にも精神的にも、もう少しゆとりある生活を送りたい」との気持ちもある。現時点では交際している相手はおらず、結婚の予定もない。だが、独身のまま地元に戻るのは、「精神的なハードルがあまりに高い」という。
「今年の正月もそうでしたが、地元に帰るたびに“結婚はまだか、早く子どもを”と祖母や母親から急かされて、うんざりしています。地元にいる友達はみんな20代で結婚して子どもがいるし、今の自分とは環境が違いすぎて、話が合う人がいない。独身のままUターンでもしたら、“行き遅れた子が行き場がなくて戻ってきた”とか言われそうだし、そんな価値観が根付いた土地で、この年で今から誰かと出会うのも難しそうだなって……」
単身者の「権利」は注目されない
女性は本来、結婚し、子どもを産んで育てるもの――。地方には往々にして、そんな旧態依然とした価値観が残っていることもある。価値観が多様化する現代にあって、「結婚して子どもがいること=幸せ」という固定観念も、まだ都市部に比べると強いかもしれない。
だが、単身者の割合は、2050年には、27都道府県で4割超にも上ることが予測されている。15歳以上人口の男性の未婚率は34.6%、女性の未婚率は24.8%(20年、国勢調査)と、年々未婚率が上昇するなかで単身世帯も増加している。
にもかかわらず、単身者の権利は語られることが少ない。「なぜ結婚しないのか」「独身=結婚できない=かわいそう」という目を不躾に向けられる瞬間が地方では特にあるのだと、女性たちは証言する。単身者という属性は「結婚」するまでの「過渡期」であるから尊重したり便宜を図ったりする必要はない、という観念が、人々の意識の奥底に横たわっているように思えるという声もある。