移住はしてみたけれど…

「いい年して、まだフラフラしてるのかっていう目で見られるのがしんどいなって思う」

 こう話すのは、関東圏の出身で、東京で13年ほどの社会人生活を過ごした後、中国地方に移住した女性(40)だ。これまで過ごした都会を離れ、思い切って環境を変えてみたいと、3年前に移住し、現在はフリーランスで仕事をしている。

 移り住んだのは、県庁所在地から離れた山あいの町にある一軒家。町の斡旋で、築年数が浅めで広い物件を、格安で借りられた。仕事は基本的にリモートで行うため、利便性よりも自然豊かな環境を優先した。周りには若い年代の移住者も多く、「ここならやっていけそうだ」と思ったという。

 だが、周囲との交流を重ねるにつれ、モヤッとする瞬間が度々出てきた。

「早めに手を打ったほうがいい」

 例えば近所に住む、年配の女性と話した時のこと。いつもおすそ分けと言って野菜や果物をくれたりして、何かと気にかけてくれる人なのだが、少々お節介なところがある。女性が独身で子どももいないと知ると、こんな言葉を投げかけてきた。

「ちょっと前に引っ越してきた○○さんも、離婚して今は独身らしいよ。前に一度結婚してたってことは、そこまで変わり者じゃないかもよ。今度一緒に出かけるとかしてみたらどう? ずっとこのまま一人でいるなんて、寂しいでしょう。悪いこと言わないから、早めに手を打ったほうがいいよ」

 この、プライベートに土足で踏み込んでくる感じは何だろうか。「余計なお世話すぎる」と感じたが、悪気がないのもわかっている。その場では「ハハハ〜」と、なんとなくお茶を濁して終わらせたが、独身者に対する明らかなレッテルを感じた瞬間だった。

 結婚歴があることが「変わり者」ではないことの証明であるなら、結婚をしていない自分は「変わり者」か、何か問題のある人ということか……。

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