
結婚や出産に際して、職場で贈る「お祝い」。こうしたお祝いも単身者は「贈るだけ」だ。祝う気持ちがないわけではないが、たまにこれまで出資した額を数えてしまう――。単身者の「いま」を取材した(全6回のうち2回目)。
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「お祝い」に加え業務でしわ寄せ
「同僚の結婚や出産のお祝いでかかった出費は、50万円を軽く超えます。いつか私もお祝い金を回収できる日がくるだろうか、と考えたことは、一度や二度ではありません」
飲料メーカーに勤める女性(38)はこう話す。
女性の職場では、同僚同士で結婚祝いや出産祝いを贈り合う文化もある。職場の人から結婚式に招かれたら、基本的には出席するのも暗黙のルールだ。
こうした金額的な負担に加えて、同僚が休業するたびに業務のしわ寄せまでやってくると思えば、ため息をつきたくなっても当然ではないかと思う。女性は言う。
「会社も社会も子どもを持つ女性には優しく、温かく対応している感じがします。それに比べて、独身者は立場的に尊重されていない感が強い。今は子育て支援や介護の福利厚生制度は充実しているけれど、独身に限った制度ってないですよね。子どももいない、親も元気、自分も元気となると、とにかく働くだけ。どれだけ制度が整っていたとしても、結局それを使う権利がないという時点で、独身は不利だなと思わされる場面が多いんです」
「気にしないで」と言わなければ
同僚が育休をとる時には、「おめでとう」「頑張ってね」と笑顔で送り出す。子どもの行事や、熱が出たなどの突発的な休みに対応する時も、「気にしないで」と何でもないふうを装う。世間の暗黙のルールに則って。
「それが“社会的な規範”だし、子どもが理由となれば、無条件に“気にしないで”と言わなければならない世間の空気もある。でも、その分膨らむ自分の業務量が頭をよぎるんですよね。『またこっちにしわ寄せがきたな』って思います」(女性)