騒動後、彼女の中には離婚という選択肢も浮かんでいた。母親からも事務所からも離婚をすすめられるようなことはなく、「自分で選んだ方がいい」という趣旨のことを言われていたそうだ。世間的には離婚が当然とされてもおかしくない状況の中で、なぜ彼女は関係を続けることを選んだのか。その理由の中心には、やはり子どもの存在があった。

 当時1歳半だった息子の前で、家庭の空気を濁さないよう努めて明るく振る舞いながら、夜になり子どもを寝かしつけた後、夫婦で話し合いを重ねたという。彼女の視線は現在ではなく未来に向けられていた。

佐々木希らしい視点でとらえたいま

 将来、子どもが事件のことを知ったときに、父親が近くにいる方がいいのか、いない方がいいのか。そのことを考えて、佐々木は離婚をしないことに決めた。子どもにとっての父親像を守るための選択だったのだ。

 この判断は、決して情に流されたことによるものではない。MCの東野幸治との会話の中でも彼女は繰り返し「あいつが悪い」などと語り、許してはいないことを明言している。

 一方で、渡部が家にいるようになったことで子どもとの関係が深まり、以前よりも父親としての時間を持てるようになったことを前向きに捉えている。これもまた、冷静に状況を見つめる彼女らしい視点である。

 騒動後、渡部の活動は激減し、現在も地上波テレビではほとんど仕事ができていない。一方で、佐々木は女優としてのキャリアを着実に積み、いまや家族の大黒柱とも言える存在になった。

 いまだに夫の不倫を「許していない」と語る佐々木からは、凛とした強さを感じた。日本中から好奇の目で見られたこの事件を、自分の人生の重荷にしていない。前を向いて生きていく覚悟が伝わってきた。容貌の「美しさ」で人々を魅了し続けてきた彼女が、人間としての「格好良さ」という新しい一面を見せてくれた。そこに番組の本当の価値があった。(お笑い評論家・ラリー遠田)

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