
歌舞伎役者にはなれない宿命を背負って
歌舞伎一家に女性として生まれ、歌舞伎役者にはなれない宿命を背負ってきた寺島さん。映画に舞台に道を見いだし、いまや唯一無二の俳優となった。
「やはり『血』を持っているっていうのは、それはそれですごいんですよね。私自身、舞台の前にブルブル震えるほど緊張することがある。そんなときは鏡を見て『父と母のそして御先祖の血を引いているんだから、私にはできる、絶対にできる!』と念じて出て行きます。でも『血』は芸を後押ししてくれる半面、邪魔になることもある。いつまでも寺島しのぶは父と母の娘だとプロフィルに書かれますしね。この世界に居る限り、血は切っても切れないものなんです」
この5月に眞秀さんが出演した、八代目尾上菊五郎、六代目尾上菊之助(11)の襲名披露公演。同世代と共演した「弁天娘女男白浪」の舞台上でも「血」を強く感じたという。
「白浪五人男が並ぶ『稲瀬川勢揃い』の場面で、子供達が揃うと、みんな父親はもちろんのこと、お祖父様に仕草やセリフの言い回し、もちろん顔も似てるんですよ。うわ、血だ!って思います。眞秀の南郷力丸という役は父に習いましたが、父は弁天役者ですから一度も演じたことはない。だから眞秀のオリジナリティでやるしかなかったんです。もちろん色んな役者さんからもアドバイスをいただきましたが。1カ月舞台にたってみると子供達も日々変わっていき切磋琢磨して堂々と立っている。眞秀に彼らみたいな父親はいないけど、舞台に立つことで自分なりの見せ方の工夫やコツを掴もうとしている。私もできるだけ見て、毎日気づいたことを眞秀に話します。千秋楽まで兎に角発見し続けて欲しいんです。」
「国宝」という映画が歌舞伎への新たな興味のきっかけにもなればとも願っている。
「2万円のチケットを尊いと思って観劇してくださる方々を絶やさないためにも、歌舞伎ファンの一人として歌舞伎が更に発展し世界へと普及されていくことを切に願います」
(構成 フリーランス記者・中村千晶)
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