
「AERA DIGITAL」に最近掲載された記事のなかで、特に読まれたものを「見逃し配信」としてお届けします(この記事は6月9日に「AERA DIGITAL」に掲載されたものの再配信です。年齢や肩書などは当時のもの)。
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「私は専業主婦(主夫)」と自信をもって言える人は、今の時代どれぐらいいるのでしょうか。共働きが増える時代でも、家事・育児が重要な労働であることに変わりはありません。でも、なぜか肩身が狭い――。令和を生きる専業主婦のリアルを取材しました。
「地域差もあれば、世代で価値観も違います。『専業主婦』論はいろいろです。でも私は誇りある『仕事』だと思っています」
こう話すのは、東京都在住の専業主婦の女性(39)だ。2人の娘を育てながら、幼稚園の保護者会会長を務め、運動会などのイベントでは大活躍。明るい笑顔でテキパキと会長業務をこなす姿は、まさに“デキる女性”だ。
地方出身の女性は、大学進学を機に上京。難関私立大学を卒業し、金融機関に就職したものの、音楽関係の仕事をする夢をあきらめきれずに数年で退職。夢に向かって努力する過程で結婚し、長女の出産を機に専業主婦になったという。
「子育ては想像以上に大変で……。夫とも相談し、私中心で子育てをしよう、ということにしました。仕事が好きだったので、悩んだこともありますが、お母さんが時間的にも精神的にも余裕をもち、自信をもって子どもに接すると、家庭にはプラスに還元されると気づきました。それからは専業主婦でいることに肯定的です」と話す。
バリキャリからの何気ないひとこと
一方で、「専業主婦」に対する風当たりがきついと感じることはあるという。女性は「軽く見られているな、と感じたこともあります」と打ち明ける。
その意見に同意するのは、埼玉県で暮らす専業主婦の女性(43)だ。看護師として働いていたが、夫(40)の海外転勤が決まったのを機に、30代半ばで退職し、専業主婦になった。
5年前に帰国したタイミングでコロナ禍になり、息子(9)の小学校入学準備などもあり、復職せずに家事・育児に向き合う日々だ。息子の宿題をチェックしたり、夢中になっているサッカーの送迎をしたりする日々は、慌ただしくも充実しているという。だが――。
「週末に公園に行ったときのことです。たまたま出会った名前も知らないバリキャリ風の若いママと何気なく世間話をしたら『専業主婦だなんて、偉いですね。私はずっと子育てだけはできなくて、働いてます』と言われたことがあります。何も言えませんでした。わたし一応、大学院出てるんだけどな、って……」