厚生労働省の統計では、2024年の職場での熱中症による死傷者(死亡・休業4日以上)は1257人で、統計開始以来最多。業種別では製造業235人、建設業228人、運送業186人、警備業142人と続く。

 この現実を受け、企業の対応も加速している。ある大手製造業では、工場内にミスト冷却やスポット冷風器などの「クールスポット」を設置し、作業者が定期的に体を冷やせる環境を整備した。

 建設業界では、早朝から働く「サマータイム勤務」を導入したところもある。気温が上がる前に主要作業を終える工夫だ。

猛暑時代のリモートワークを再考する

 コロナ禍が過ぎ去り、世界的に「オフィス回帰」が進んでいるが、熱中症対策のためにもリモートワークの活用を再考すべきだろう。通勤そのものをなくすことで、熱中症リスクを大幅に削減できる。

 自分のためだけでなく、満員電車が緩和されるだけで、どうしても電車に乗らなければならない他の乗客にもメリットがあるだろう。

 コロナ禍で培ったリモートワークのノウハウ・習慣が、今度は命を守る手段として再評価されるべきだ。ある大手IT企業では、気温35度以上の日は「猛暑日リモートワーク」を推奨。通勤による熱中症リスクを回避する狙いだ。

 製造業でも動きがある。工場勤務者向けに「猛暑シフト」を導入。早朝5時から勤務開始し、気温が上がる前に主要作業を終える。午後は軽作業のみとする工夫だ。

 このような取り組みは企業にとってもメリットは大きい。従業員の健康を守り、生産性を維持できる。オフィスの冷房費削減にもつながる。猛暑日のリモートワークは、もはや「働き方改革」ではなく「命を守る対策」と言えるだろう。

(横山 信弘:アタックス・セールス・アソシエイツ 代表取締役社長)

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