6連覇を達成した藤井聡太棋聖=2025年6月30日、千葉県木更津市
6連覇を達成した藤井聡太棋聖=2025年6月30日、千葉県木更津市
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 注目対局や将棋界の動向について紹介する「今週の一局 ニュースな将棋」。専門的な視点から解説します。AERA2025年7月14日号より。

【貴重写真】和服じゃない!スマホ片手にデニム姿の藤井聡太さん

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 現代将棋界の王者の強さは、まさに「棋聖」の名に恥じぬものだった。

 6月30日、千葉県木更津市でおこなわれたヒューリック杯第96期棋聖戦五番勝負第3局、藤井聡太棋聖(22)-杉本和陽六段(33)戦は84手で藤井が勝利。3連勝でシリーズを制し防衛を果たした。

 タイトル初挑戦の杉本は、現代最強の王者を相手に、最善を尽くしてよく戦った。藤井とは対照的な経歴で「苦労人」の杉本を応援したファンも多かっただろう。

 杉本は本局、互角の形勢で終盤に持ち込み、勝機を作ったように見えた。しかし藤井は、観戦者が思わず声をあげるようなきわどい選択で自玉への王手をかわす。そのあとは、信じられないような速さで相手玉を寄せ切った。藤井が強すぎたと言うほかない。

 2020年、史上最年少17歳で棋聖に就位した藤井は、6連覇を達成した。

「初めて棋聖のタイトルを獲得できたのはいまから5年前ということになりますけれど。振り返ると、もうそんなに経ったんだなという感覚が強いかなというふうに思います」(藤井)

 将棋界の八大タイトルを一時は独占し、現在は七冠を堅持している藤井。通算獲得数は、早くも30期に到達した。

「やっぱりここまでのタイトル戦を振り返って、どれも大変なシリーズばかりなので。ここまでは30期という結果にはやっぱり、少なからず幸運もあったのかなというふうには感じています」

 藤井の言葉はいつも通り、謙虚そのものだった。もちろん、一局一局、一手一手を見ていけば、藤井が楽に勝ち続けているようには見えない。しかしトータルで見ればこの圧倒的な戦績は、図抜けた実力を如実に反映したものと言えそうだ。自身の記録を気にしない藤井にとって、30期の節目もまた、通過点に過ぎないのだろう。(ライター 松本博文)

AERA 2025年7月14日号

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