
【以下の記事には、映画の内容のネタバレが一部含まれます】
【写真】女優陣の演技も必見!「国宝」のメイキング写真をもっと見る
全国東宝系で公開中の映画「国宝」が今、大きな話題を呼んでいる。同作は吉田修一の同名小説が原作で、任侠の一門に生まれながらも、歌舞伎役者の家に引き取られ、芸の道に人生を捧げた主人公・喜久雄の壮大な人生を描いた作品だ。
公開24日間で観客動員数231万人、興行収入32億円を記録し、現時点(7月3日)で今年の邦画実写ナンバーワンになるなど、その勢いは止まらない。少し気が早いかもしれないが、日本アカデミー賞をはじめ、さまざまな賞を総ナメすることは確実だろう。
各メディアはもちろん、SNSでも識者たちがそれぞれの思いをアツく語り、すさまじいまでのブームが巻き起こっているが、一つのエンターテイメント作品について性別・世代を越えてここまで多くの人が盛り上がることは、末席ながらエンタメ業界に携わる身として非常に喜ばしいことでもある。
上映時間は2時間55分。映画館では当然のごとくCMも入らなければ、10秒スキップなども存在しない。しかしながら、映画やドラマの倍速視聴が全盛の今、いわゆるタイパ重視では絶対に味わうことのできない充足感がそこにはあった。これだけの時間、一つのコンテンツに没入できたのは久しぶりだったし、映画の持つパワーを改めて感じた人も多いのではないだろうか。
私が観たのは平日の午後イチの回だったが、劇場はほぼ満席。おそらく歌舞伎ファンであろう年齢層の女性の数が多かったとともに、ポップコーン片手の若いカップルの姿も見受けられた。コアからライトな層まで、本作が幅広い人たちに関心を持たれていることがうかがえる。
あらかじめ断っておきたいのだが、私は恥ずかしながら歌舞伎の知識をまったく持ち合わせていない。なので、主演の吉沢亮をはじめとする俳優陣の演技を中心に本作の魅力について語りたいと思う。
吉沢が演じるのは立花喜久雄(花井東一郎)。長崎の任侠の一門に生まれ、抗争で組長である父(永瀬正敏)を亡くした後、歌舞伎の世界へ身を投じるという数奇な運命の持ち主である。