4B運動を知っていますか?(写真はイメージ/gettyimage)
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 作家・北原みのりさんの連載「おんなの話はありがたい」。今回は韓国のフェミニズムについて。

【写真】石破首相と握手! 李在明大統領

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 先日、韓国のジャーナリストと話す機会があった。彼女はフェミニストを自認する30代、韓国で今起きている「4B運動」について記事を書いているという。

 4B運動とは、韓国の若い世代の女性たちによる「戦い」で、男性と恋愛しない、男性とセックスしない、子供を産まない、結婚しない、つまりは、男性と関わらないという「運動」のこと。今始まった新しい運動というわけではなく、この10年ほど、韓国でずっと燃え続けてきた女性たちの怒りの声が、明確に「男性拒否」という形で表れているのだ。

 さらにそんな女からの拒絶に対抗するように、またはもともとあった男たちのあがきのような不満も、激しい勢いで噴出しているという。

 たとえば弾劾された前大統領ユン・ソンニョル氏は、2022年の大統領選のときに反フェミニズムを打ち出す側近イ・ジュンソク氏を前面に出し、若い男性の支持を得てきた。イ・ジュンソク氏は1985年生まれの若手で、ハーバード大学を卒業した超エリート。その彼が、女性運動を「(男性への)逆差別」と一蹴したり、「過激なフェミニズムはテロと同じ」と断定したり、政治への女性参画を促すクオータ制についても「(女性への)施し」と呆れる表現をしたり……女性を憎む男性たちにとっては溜飲を下げるような発言で韓国男性の支持を得てきたのだ。(ちなみに、イ・ジュンソク氏は性接待を受けた疑惑で党から離れた)

 4年ほど前のこと、私が代表を務める出版社で、韓国のフェミニズムの本を翻訳する機会があった。それは、実際に起きた事件に関わった複数の女性たちが執筆したもので、性暴力をコンテンツにしたポルノサイトを封鎖させるまでの戦いを記したものだった。そのとき、私と韓国の出版社は、ある表現を巡って話し合うことになった。

 私は、日本語版には「ちょっと」を意味する指の形のマークを紹介しようとした。親指と人さし指でつまむようにするアノ仕草だ。このマークは、ポルノサイトを封鎖した女性グループのシンボルになっていたもので、韓国では「ペニスの大きさ」の隠喩でもあった。それは、女性たちが美醜や胸の大きさなどでからかわれてきたことへの抵抗のシンボルとして使われていて、「男らしさなんて、しょせんこの程度」という意味も含まれている。韓国のフェミニズムを紹介するならこのマークも紹介するのは自然な流れだった。

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